ジョンスコのエレ・ジャズの基礎
心地良く捻れた、プログレッシヴなジャズ・ギタリスト、ジョン・スコフィールド(以降、ジョンスコと略)。そんなジョンスコの1980年代のリーダー作の落ち穂拾い。当ブログで、まだ記事化されていないリーダー作を順に聴き直している。すると、1980年代って、ジョンスコにとって、エポックメイキングな年代だったことが良く判る。
1980年代は、1982年にマイルス・デイヴィスのバンドに参加。3年の在籍の間に『Star People』『Decoy』『You're Under Arrest』という、1980年代マイルスの傑作盤のパーソネルに名を連ねた。この途方も無い「マイルス体験」が、ジョンスコの個性に、更なる魅力的な個性を積み重ねることになる。
John Scofield『Electric Outlet』(写真左)。1984年4〜5月の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (el-g, b), Ray Anderson (tb), David Sanborn (sax), Pete Levin (key), Steve Jordan (ds)。エレ・ジャズにトロンボーンの参加がユニークな、クインテット(5人)編成。良く見ると、ジョンスコがベースを兼任、ジョンスコ自身による「打ち込み」である。
聴けば直ぐに判るが、マイルスのエレ・バンドに参加した影響がモロに出ているのが微笑ましい。心地良く捻れた、プログレッシヴなエレギのジョンスコ、1980年代はどの方向に、自らの音の志向を持って行くのか、興味津々だったが、ちょうど良いタイミングで、マイルス・バンドに参加したようで、マイルスからの影響がとても良い方向に反映されている。
まずは「ファンク色」が強くなった。軽めの切れ味の良いファンクネス。エレギのエフェクトのかけ方も工夫が凝らされていて、この「ファンク色」を効果的に醸し出すエフェクトが大活躍。このエフェクトと従来からの「心地良く捻れたエレギ」のフレーズとが相まって、ジョンスコならでは、のファンク色が成立している。
続いて「強力なグルーヴ感」の醸成。ベースがジョンスコの打ち込みにも関わらず、コンピューター&デジタル臭が希薄で、強烈なグルーヴ感が生み出されているのにはビックリ。エレ・マイルスの強烈なグルーヴ感の応用とでも表現出来る、マイルスほど重力級では無いが、ソリッドでうねるようなグルーヴ感を生み出すことに成功している。
そして、マイルスの曲の作り方&組立て方の応用がみられること。絶対的にジャズをベースにしつつ、ブルースあり、ロックあり、クロスオーバーあり、ソウルあり、バラードあり、シャッフルありの、他のジャンルの音楽志向を取り込み、ジャズ化するという、ジャズの得意とする「融合音楽」をエレ・ジャズの中で実現する。これはマイルスの薫陶の中で育まれたものだろう。
このリーダー作で、ジョンスコは、ジョンスコ独自のエレ・ジャズの基礎を確立している様に感じる。エレ・マイルスのサウンド志向は、ジョンスコの「心地良く捻れたプログレッシヴなジャズ・エレギ」という個性を、更に魅力的に発展させる作用があった。そして、ジョンスコはそのエレ・マイルスのサウンド志向をジョンスコ仕様としてコンパイルし、その最初の成果がこの『Electric Outlet』。ジョンスコの捻れギターが心地良く聴ける、ジョンスコの80年代の傑作の1枚。
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