浅利史花の初リーダー作です
我が国のジャズ・シーンについては、まだまだ有望な若手ミュージシャンがデビューしてくるので、毎月の新盤のチェックは欠かせない。
今年の4月26日に、浅利史花のセカンド盤『Thanks For Emily』(左をクリック)について語った訳だが、それでは彼女のデビュー盤はどうなんだろう、とアルバムを遡ってみた。
Fumika Asari(浅利史花)『Introducin'』(写真左)。2020年の作品。ちなみにパーソネルは、オール・ジャパンなメンバーで、浅利史花 (g), 中牟礼貞則 (g), 江澤茜 (as), 駒野逸美 (tb), 北島佳乃子, 石田衛 (p), 小杉敏, 三嶋大輝 (b), 木村紘, 柳沼佑育 (ds)。
ベースとドラムは2人ずつ、曲毎に使い分けているが、演奏の基本は、浅利のギターがフロントに、バックにベースとドラムが付くトリオ編成。曲によりピアノが客演(4曲かな)。アルト・サックス、トロンボーンは2曲のみの客演。中牟礼貞則のギターは、3曲目「Black Orpheus」のみの客演。客演の楽器も浅利のギターより目立つことは無く、しっかりとサポートに回っている。
セカンド盤を聴いて感心下「スインギーでジャジー、テクニックも優秀な、正統派ジャズ・ギター」は、このデビュー盤でもしっかり個性を発揮している。テクニックも優秀だが、そのインプロビゼーションは堅実そのもの。速弾きやオクターブ奏法など、決して無理はしない。
伝統的なジャズ・ギターを着実に堅実に弾き回しているところは実に初々しい。しかも、歌心も備えているのだから隅に置けない。この浅利の個性と弾きっぷりは、デビュー盤として大いに評価して良いだろう。
初々しいからといって、稚拙なところは微塵も無い。堅実に弾き回している故、破綻は無い。安全運転と言えば安全運転で、スリリングな面に欠ける、といった辛口の評価もあろうかと思うが、僕は、この堅実な安全運転な弾き回しは好ましいと感じている。何故なら、堅実でミッドテンポがメインなのだが、特にアドリブ部で露わになるスイング感が、堅実で安全な弾き回しが故に、しっかりと前面に出ている。これはプロデュースの賜物だろう。
加えて、ギターの音が抜群に良い。ギター自体が、恐らく、相当質の良いヴィンテージものだと思われる。そして、録音が良い。浅利の弾きっぷりによるギターの響きや胴鳴りがダイレクトにスピーカーを通じて伝わってきて、聴いていてとても心地良い。アコギ、セミアコギの音はこうでなくては。浅利の弾きっぷりも良いが、このギターの音の良さが、浅利の個性を更に引き立てている。
良きアレンジ、良きプロデュースに恵まれた、浅利のファースト・リーダー作。浅利史花は1993年生まれ。今年で30歳。ジャズ界ではまだまだ「若手」。意外と、これだけ、オールドスタイルのヴィンテージ・ジャズギターはなかなかいない。デビューは堅実、安全運転で良し。焦らず、しっかり個性とテクニックを着実に進化していって欲しい。
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