オルガンのコルトレーンの出現
ブルーノート・レーベルは「オルガン・ジャズ」が得意。ジャズ・オルガンの神様、ジミー・スミスを見出して(マイルスから紹介されたみたい)、リーダー作を録音させ、オルガン・ジャズの人気者に仕立て上げたのが、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオン。
つまり、ライオンがジャズ・オルガンについて造詣が深かったが故、ブルーノートは、ジミー・スミスの後に出てくる有望なオルガニスト達をキャッチしてはリーダー作を録音させた訳で、1950年代から1960年代のジャズ・オルガンの歴史については、ブルーノートのカタログを押さえておけば良いくらいなのだ。
Larry Young『Into Somethin'』(写真左)。1964年11月12日の録音。ブルーノートの4187番。ちなみにパーソネルは、Larry Young (org), Sam Rivers (ts, #1-4), Grant Green (g), Elvin Jones (ds)。「オルガンのコルトレーン」の異名をとるラリー・ヤングのブルーノートでのデビュー盤。
ラリー・ヤングはブルーノートでリーダー作を出す前、3枚ほど、他のレーベルからリーダー作をリリースしているが、ヤングのオルガンの個性がハッキリと記録されているのは、この盤以降のブルーノート盤だろう。加えて、サイドマンも厳選されていて、このブルーノートでのデビュー盤には、ヤングのオルガンの個性が溢れている。
オルガンによるモーダルなフレーズ、オルガンによる「シーツ・オブ・サウンド」、オルガンによるエモーショナルな展開、確かに「オルガンのコルトレーン」と呼ばれるのが、実に良く判る。この盤を聴けば直ぐに判るのだが、ヤングのオルガンは、既にジミー・スミスのオルガンとは全く異なる。つまり、ジミー・スミスの影響下に無い、当時として「新しいオルガンの響き」なのだ。
新主流派の時代を感じさせるモードなオルガン&演奏。フロントのパートナーの1人として、グラント・グリーンがいるのだが、パッキパキ硬質でファンクネスだだ漏れのシングルトーンのグリーンが、モーダルなジャズに何故いるのか、と思われる方がいると思うが、実はグラント・グリーンは、モード・ジャズも「いける」。
例えば『Idle Moments』で「Jean de Fleur」という完璧モーダルな秀曲を書いているし、本作2曲目の「Plaza De Toros」はモーダルな曲だが、これはグラント・グリーンによる作曲。
テナーのサム・リヴァース、ドラムのエルヴィン・ジョーンズは言わずもがな。このテナーとドラムは「モード・ジャズの申し子」的存在で「安心」。
それまでの「ファンクネス濃厚でソウルフルなオルガン」では無く、「モーダルでストイックでどこか欧州ジャズ的なオルガン」は実にユニーク。「ファンクネス濃厚でソウルフルなオルガン」は、ジミー・スミスによって、深化の余地が無い位に完成されている。現代のジャズ・オルガンは、この「モーダルでアーティスティックでどこか欧州ジャズ的なオルガン」を深化させているケースが大多数。
そういう意味でも、このラリー・ヤングの「モーダルでストイックでどこか欧州ジャズ的なオルガン」の出現は、オルガン・ジャズにとって重要な出来事だった。オルガンという楽器の可能性を広げ、深化の方向性を提示した。もっと評価されても良い、ラリー・ヤングのジャズ・オルガンの存在意義だろう。
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