もう1つのコンガ入りガーランド 『Rojo』
プレスティッジ・レーベルって、アルバムの編集方針も理解出来ないところが多々あるのだが、録音方針も良く判らないところがある。例えば、このレッド・ガーランド・トリオにバレットのコンガの入ったセッションは3つある。
1つは 1958年4月11日の『Manteca』セッションの全6曲。全てコンガ入りで全曲タイムリーにアルバム化。2つ目は 1958年6月27日の『Can't See for Lookin'』セッション。全12曲あったがコンガ入りは7曲。しかし、録音当時は全てアルバム化されず、1963年に何と、コンガ抜きのトリオのみの4曲だけがアルバム化。コンガ入り7曲は全てお蔵入り。
3つ目は 1958年8月22日の『Rojo』セッション。全6曲中、コンガ入りは4曲。しかし、これらも録音当時は全てアルバム化されず。こちらは1961年にアルバム化されている。今日はこの『Rojo』 を取り上げる。
Red Garland『Rojo』(写真左)。1958年8月22日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), George Joyner (b), Charlie Persip (ds), Ray Barretto (congas)。録音当時は「何故かお蔵入り」盤。リリースは1961年の初夏の頃。3年弱、倉庫に眠っていた音源になる。
バレットのコンガ入りは4曲。トリオのみの演奏は2曲。しかし、アルバムをずっと通して聴いていると、曲が進むにつれ、コンガの有無が判らなくなる。コンガがハードバップなトリオ演奏にしっかり溶け込んで、ラテンな雰囲気が薄れている。
それでも、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートが、トリオ演奏に良い雰囲気を加味している。トリオのみの演奏よりも、リズム&ビートがクッキリ浮き出て、メリハリの効いた演奏に仕上がっている。
コンガ入りのトリオ演奏の最初は1958年4月11日の『Manteca』セッション。この時のコンガの役割は、ガーランド・トリオの演奏にラテン・ジャズの風味を加味すること。そして、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートで、トリオ演奏のビートをより明確にすること。これがピッタリ当たって、『Manteca』は充実した内容の盤に仕上がった。
この『Rojo』では、ラテン・ジャズの風味を加味することよりも、コンガの音をハードバップなジャズ演奏に適応させて、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートで、トリオ演奏のビートをより明確にすることに主眼が置かれている様な感じがする。そういう点で、この『Rojo』セッションは充実した内容だと思うのだが、録音当時はお蔵入り音源。1961年にアルバム化されただけ、良かったと思うくらいの内容の充実度だと僕は思う。
それを思うと、1958年6月27日の『Can't See for Lookin'』セッションのコンガ入りは7曲はアルバム化されず、1977年に未発表音源集『Rediscovered Masters』の中でリリースされただけ。今ではストリーミングで聴くことは出来るが、正式なアルバム化はされなかったのは残念である。
しかし、プレスティッジ・レーベルって、どうして、1958年だけ、コンガ入りのガーランド・トリオのセッションを4月、6月、8月の短期間に3セッションも持ったのか。タイムリーにアルバム化したのは4月のセッションのみ。しかも、6月のセッションのコンガ入り7曲は未発表音源集でリリースされただけ。どうも、この辺りのプレスティッジの録音方針が理解出来ないなあ。
ガーランド・トリオのコンガ入り企画盤は、ガーランド・トリオの演奏の「金太郎飴」感を緩和させる効果があって、良い内容だと思っている。『Manteca』と『Rojo』の2枚が正式盤としてリリースされたことは幸運だった。いつもとは違う、コンガでビートが強化されたガーランド・トリオの演奏が新鮮に響く。
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