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2023年8月11日 (金曜日)

スコットのドラミングは新しい。

最近、ドラマーのリーダー作を追いかける中で、現在のジャズ・ドラマーの優秀どころのリーダー作を聴いている。21世紀に入った辺りから、現代のジャズ・シーンに繋がる、次世代のドラマーが幾人か出てきている。ブライアン・ブレイドもそんな中の1人だし、最近ではテリー・リン・キャリントン、ジョナサン・ブレイク、マーク・ジュリアナなど、優れた中堅ドラマーがどんどん頭角を現している。

Kendrick Scott『Corridors』(写真左)。2023年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Kendrick Scott (ds, vo), Walter Smith III (ts), Reuben Rogers (b)。

最近のドラマーがリーダーのアルバムの流行なんだろうか、ウォルター・スミスⅢのテナーがフロント1管、ピアノレスのワンホーン・トリオの編成。フロント管のアドリブの自由度とリーダーのドラマーのパフォーマンスの自由度が最大限に広がる編成である。

ケンドリック・スコットも、最近、頭角を現した現代ジャズ・ドラマーの優秀どころの1人。米国ヒューストン出身、現在43歳のバリバリ中堅のジャズ・ドラマー。テレンス・ブランチャードのクインテットでの活躍、それから、我が国の山中千尋『Abyss』『Forever Begins』への参加が印象的。リーダーとしての音作り、サイドマンとしての参加傾向から、現代の「ネオ・ハードバップ」「ネオ・フォービート」志向のドラマーであることが窺える。
 

Kendrick-scottcorridors

 
この『Corridors』を聴くと、スコットのドラミングが実に格好良い。冒頭の「What Day Is It?」では、音数多く炸裂する様なドラミングは見事。高速4ビートの疾走感が堪らない。ドラミングの切れ味が抜群なのだろう、音数が多いにも関わらず、煩くない。逆にキレッキレのビートが耳に心地良い位だ。加えて、スコットのドラミングは重心が低くて、ビートが分厚い。ズンズンと響く重低音がこれまた心地良い。

演奏全体は、オーソドックスな「ネオ・ハードバップ」「ネオ・モード」なんだが、スコットのドラミングが新鮮に響くので、レトロな雰囲気や温故知新な感じは全く無い。どこまでも現代的な、新しいモード・ジャズの響きがとても良い。これだけ自由度の高い、切れ味良く重心の低いドラミングがバックにいるのだ、フロント1管のウォルター・スミス三世は、そんな分厚いビートに乗って、伸び伸び、大らかに豪快に疾走感溢れるテナーを吹き上げる。

印象的で小粋なラインを刻みつつ、ウネウネと波の様に弾性に富んだルーベン・ロジャーズのベースは、このバンド演奏、ネオ・モードの展開の良き「道標」となって、演奏全体の底を支え、リズム&ビートをキッチリと押さえている。これまた見事。

スコットのドラミングは「新しい」。従来のハードバップ、モード・ジャズには無い、新しいドラミングの響きは、オーソドックスな「コンテンポラリーな純ジャズ」に新しい息吹を与えてるかのようだ。今から次作が楽しみ。
 
 

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