隠れ名盤だと思う 『Manteca』
ブロックコードと流麗なシングル・トーンが得意技のレッド・ガーランド。ガーランドは、何故か、何の脈略も無しに、別々のセッションから直感頼りで演奏曲をセレクトして、1枚のアルバムに仕立て上げるプレスティッジ・レーベルから多くのリーダー作をリリースしている。プレスティッジのハウス・ピアニストとしても良い位である。
しかし、ガーランドの場合、セッションの寄せ集めアルバムがお得意のプレスティッジのリーダー作の中で、プレスティッジには珍しい、同一セッションの中から編集されたリーダー作はいずれも「優秀盤」である。これ、ガーランドならではの「傾向」だと思うのだが、この「傾向」を指摘するジャズ者の方には今まで出会ったことが無い。そういう「傾向」が明らかにあると思うんだがなあ。
Red Garland『Manteca』(写真左)。1958年4月11日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds), Ray Barretto (congas)。1958年4月11日のセッション、全6曲を全てチョイスした盤。ガーランドの「定番トリオ」にレイ・バレットのコンガを入れたカルテット編成の「企画盤」。
同一セッションの中から編集されたリーダー作であり、企画盤である。ガーランドは「企画盤」に強い。この盤は、バレットのコンガ入りで、ラテン色強めのアルバム。コンガの心地良い低音弾けるビートがラテン・ジャズの雰囲気を掻き立てて、ガーランドのブロックコードが、ラテン・ビートに乗って、切れ味良く弾むようにビートを刻む。テクニックに優れるガーランド、ラテン・ビートも「お手のもの」である。
冒頭のディジー・ガレスピー作の「Manteca」が良い。このアフロ・ジャズの名曲に、バレットのコンガとガーランドのラテン・ビートなブロックコードが絡まって、爽やかで乾いた聴き心地の良いラテン・ジャズの雰囲気を添加している。ネチっこく俗っぽいラテン・ジャズに陥らないところが、ガーランド・トリオの真骨頂。
そして、このチェンバースのベース、テイラーのドラムの「定番トリオ」が真価を発揮するのが、ラストのコンガ抜きのトリオ演奏「Portrait of Jenny」。CDリイシュー時のボートラになるが、これが絶品。お得意のスロー・テンポのバラードだが、柔和な雰囲気、心地良いスイング感、玉を転がすようなタッチ、流れる様なフレージング、そして、味のある品の良いリズム&ビート。ガーランドの「定番トリオ」の名演のひとつである。
この『Manteca』というアルバム、コンガ入りの企画盤のイメージがつきまとって、しばらくの間、敬遠していたのだが、聴いてみて「あらビックリ」。コンガがビートの良いアクセントになっていて、ガーランド・トリオとして新しい響きを湛えているところが「高評価」。ガーランドの名盤の誉れ高い『Groovy』に匹敵する名盤だと思うのだが如何だろう。
でもなあ、我が国のベテランのジャズ者の方々は「コンガ嫌い」だし、このシンプル過ぎるジャケだとちょっと無理かなあ。でも、演奏内容は絶対、ガーランドの名盤の誉れ高い『Groovy』と比肩する出来だと思います。コンガとシンプルなジャケに怯まず「聴くべし」です。
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