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2023年7月31日 (月曜日)

ジョー・チェンバースの最新作。

昨日、ブライアン・ブレイドの参加アルバムのことを書いて、この1〜2年にゲットして聴いたアルバムを見渡してみたら、意外とドラマーがリーダーの良好盤があることに、改めて気がついた。

ドラマーのリーダー作って、管楽器やピアノがリーダーのアルバムとは、その「作り」はちょっと異なると思う。ドラムという楽器、旋律楽器では無いので、その奏法やスタイルをメインにリーダー作をまとめる訳にはいかない。フロント楽器として演奏の旋律部分を担当する訳にもいかない。ドラマーのテクニックや個性を披露するにも、40〜50分の収録時間、ずっとドラムを叩くわけ訳にもいかない。

リーダーとして、演奏全体の志向や傾向を参加メンバーと意思統一をして、その志向や傾向に従った演奏の中で、リーダーとして、そのドラミングの技や個性を披露することになる。その志向や傾向に則ったアレンジとリーダシップが「鍵」となる。

Joe Chambers『Dance Kobina』(写真左)。2022年の作品。ニューヨークとモントリオールでの録音。ちなみにパーソネルは、Joe Chambers (ds, perc, vib) , Caoilainn Power (as), Ira Coleman, Mark Lewandowski (b), Elli Miller Maboungou (perc), Andrés Vial, Rick Germanson (p), Michael Davidson (vib)。

1960年代から活躍しているベテラン・ジャズ・ドラマー、ジョー・チェンバーズ(以降、ジョーチェン)。1942年生まれなので、今年で81歳。この盤の録音当時は80歳。大ベテランというか、もはや「レジェンド」の域の存在である。

ジョーチェンはエリック・ドルフィー、チャールズ・ミンガス、ウェイン・ショーター、チック・コリアなど多くの著名なアーティストと共演している。ポリリズミックで新主流派なドラミングが身上で、コンテンポラリーな純ジャズが活躍のメイン・フィールド。
 

Joe-chambersdance-kobina

 
ブルーノートに移籍して以降、ジャズ、ラテン、ブラジル、アルゼンチン、アフリカ音楽の間の深い音楽的なつながりを探求した、ブルーノートでの2枚目のリーダー作。ラテン〜アフリカ路線とは言うが、こってこての、あからさまなラテン・ジャズ、および、ワールド・ミュージック志向の音作りでは無い。あくまで、ネオ・ハードバップの範疇の演奏に収めた「ラテン〜アフリカ志向」。
 
収録曲を見渡すと、ジョーチェンの自作曲と、ジャン=ピエール・ヴィアル、クルト・ヴァイル、ジョー・ヘンダーソン、カール・レイツァーなどのミュージシャンズ・チューンで固められている。これらの曲がラテン〜アフリカ志向の音作りに乗って演奏されるのだから堪らない。今までに聴いたことのないイメージの、コンテンポラリーなネオ・ハードバップが実に新鮮に響く。

パーソネルを見渡せば、実は「知らない」ミュージシャンばかり。過去に囚われない、今の、現代の、フレッシュなラテン〜アフリカ志向の演奏を目指していることが、このパーソネルを見ても良く判る。出てくる音はハイ・レベルな演奏の数々。名前は知らないけど、それぞれ実力十分のミュージシャンが参加していることは、演奏を聴いて良く判る。

「ラテン〜アフリカンなグルーヴを聴かせる」志向のビートの効いたパワフルな曲あり、スィートなバラード曲あり、特にバラード曲は、現代のR&Bのソフト&メロウな雰囲気を踏襲している様でもあり、ジョーヘンの曲などは、明らかにモードなんだけど、現代のネオ・モードなアレンジで、1960年代の新主流派の雰囲気は微塵も無い。

アルバム全体を通じて、この盤に詰まっている音は、現代の最新の「コンテンポラリーな純ジャズ」だと感じる。アレンジの過程で、ラテン〜アフリカ志向の音作りになっていて、精緻でテクニカルな純ジャズというよりは、アレンジとグルーヴで聴かせる、現代のラテン・ジャズ、および、アフリカン・ネイティヴなジャズ。硬派なコンテンポラリーな純ジャズな音作りで、聴き応え抜群です。
 
 

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