ブレイスのブルーノート最終作
ジョージ・ブレイス(George Braith)。 ブルーノート4100番台の異色の存在だろう。ブレイスは、NY出身のソウル・ジャズ・サックス奏者。ブレイスの一番の特徴は「ローランド・カークが開発したテクニックで、循環呼吸を活用して、一度に複数の管楽器を演奏する」ところ。但し、カークの様に難度高く複雑にモーダルに展開することは無く、平易にシンプルなフレーズに終始する。
George Braith『Extension』(写真左)。1964年3月27日の録音。ブルーノートの4171番。ちなみにパーソネルは、George Braith (sax), Billy Gardner (org), Grant Green (g), Clarence Johnston (ds)。ブレイスがブルーノートに残したリーダー作の3枚目、最終作になる。3作ともドラムはコロコロ変わるが、グラント・グリーンのギターとビリー・ガードナーのオルガンは不変。
この盤、聴き進めると「あれれ」と思う。ブレイスの一番の特徴は「ローランド・カークが開発したテクニックで、循環呼吸を活用して、一度に複数の管楽器を演奏する」ところ、が鳴りを潜め、サックス1本でストレートに吹きまくっている。これだと、聴いていて誰なのか判らない。ブレイスのサックス1本だけの吹奏を取ると、これと言って強烈な個性が無いのだから困る。
しかし、アルバム全体としては「間の抜けた調子外れのテーマを吹いていたブレイスは何処へ行った」なんだけど、ブレイスの曲が良くて、そのテーマを吹くブレイスのサックスが良い感じで聴こえるから不思議。この盤は、収録されたブレイスの自作曲の「曲の良さ」に救われている。とにかく、ブレイス曲の格好良さが耳に残る。
演奏の雰囲気はソウル・ジャズが基本なんだが、演奏のスピード感は「こってこてのハードバップ」。冒頭の「Nut City」から「Sweetville」まで、ブレイスはストレートにサックスを吹きまくる。
そして、やはりグラント・グリーンの「ぱっきぱき硬質で、こってこてファンキーなシングルトーン・ギター」が効いている。グリーンのギターがファンクネスをどっぷり供給して、この盤はソウル・ジャズに留めている。グリーンのファンキー・ギターが、ブレイスの吹くストレートにハードバップなサックスの中に漂うソウルフルな要素を呼び起こして、演奏全体の雰囲気をソウル・ジャズに引き戻している。
ラストのコール・ポーター作の有名スタンダード曲「Ev'ry Time We Say Goodbye」は、ブレイスの面目躍如。スローでバラードチックに演奏されることが多いこの曲を、「ローランド・カークが開発したテクニックで、循環呼吸を活用して、一度に複数の管楽器を演奏する」個性の封印を解いて、軽快なテンポで、ややアバンギャルドな響きのする叙情的な吹奏を繰り広げるブレイスが実に格好良い。
実はこのラストのスタンダード曲の吹奏で、「ああ、この盤のリーダーって、ブレイスなのね」と判る。そして、ブルーノートのブレイスとは、このラストの「Ev'ry Time We Say Goodbye」で、お別れなのだ。何だか意味深ですね。
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