『Other Side of Round Midnight featuring Dexter Gordon』
ブルーノート・レーベルの「85100 シリーズ」のアルバムを、カタログ順に整理している。「85100 シリーズ」は、ブルーノートが1979年に活動を停止した後、1984年、EMI傘下でジャズ・レーベルとして復活、復活後の最初の録音シリーズである。カタログ番号は、BT 85101〜BT 85141まで、途中空き番が1つあるので、全40枚の小規模な録音シリーズになる。
このシリーズは、ブルーノート復活後、ジャズ界では「純ジャズ復古」の時代に入っての録音シリーズなので、当時のメインストリーム志向の純ジャズの録音がズラリと並んでいる。中には、過去の音源の復刻もあったりするが、聴くべきは、この「純ジャズ復古」が始まった時点での純ジャズの音源である。中には、実に懐かしい盤もあって、全40枚、聴き直していて飽きることは無い。
『Other Side Of Round Midnight featuring Dexter Gordon』(写真左)。1985年7月1–12日、8月20–23日の録音。ブルーノートのBT 85135番。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon, Wayne Shorter (ts, ss), Freddie Hubbard, Palle Mikkelborg (tp), Herbie Hancock, Cedar Walton (p), Ron Carter, Pierre Michelot, Mads Vinding (b), Billy Higgins, Tony Williams (ds), Bobby McFerrin (vo), John McLaughlin (g), Bobby Hutcherson (vib) 等。
いやはや、懐かしい盤である。結構、御無沙汰していた。今回、ブルーノートの「85100 シリーズ」のアルバムを整理していて、この盤の存在を思い出した。20数年振りに聴いたことになる。いやはや、懐かしいことこの上無しである。この盤は、映画『ラウンド・ミッドナイト』のためのセッション中に録音された演奏から、アウトテイクや採用されなかった曲中心に編集したブルーノート盤。プロデュースはハービー・ハンコックとマイケル・カスクーナ。
実は、先行して、コロンビア・レコードから、Dexter Gordon『Round Midnight(Original Motion Picture Soundtrack)』(写真右)がリリースされている。同傾向、同内容のサウンドトラック盤である。
こちらの方は、サブタイトルにもある様に、映画で採用した演奏で固めたサウンドトラック盤。映画の映像のバックに流れるBGM的な演奏なので、ジャズの個性である即興演奏の自由度や展開の柔軟度が制限されている雰囲気が見え隠れする。どこか、窮屈な、躍動感が削がれた演奏がメインになっている様に感じていて、僕はあまり好きじゃ無い。
逆に、ブルーノートからの『Other Side Of Round Midnight featuring Dexter Gordon』(写真左)は、収録された演奏について、かなり水準の高い演奏で固められている印象で、この盤まるごと、純ジャズ復古後の、当時の先端を行くハードバップ盤として聴いても、十分に鑑賞に耐える内容。
映画の主役を務めたデクスター・ゴードン(愛称・デックス)に敬意を表して、デクスター・ゴードン名義のアルバムになっているみたいだが、中身はそれぞれの曲でそれぞれのジャズマンが演奏を担当している「オムニバス形式」の内容。アルバムのタイトルを良く見たら「featuring Dexter Gordon」とある。デックスは4曲のみに参加。デックスのリーダー作として聴くのには無理がある。
演奏の基本はモード・ジャズ。1960年代前半のモード・ジャズをベースに、1980年半ばならではの「新しい響き」をしっかりと宿していて、どの曲も、1980年代のハードバップな演奏として、高水準のレベルを維持している。デックスもモーダルな雰囲気の演奏の中で、ゆったりとした吹きっぷりで、しっかりモードに対応しているのだから立派としか言い様がない。4曲しか参加は無いが、デックスのテナーは、どの曲でも素晴らしいパフォーマンスを披露している。
そして、ラストのハービー・ハンコックのピアノ・ソロ「Round Midnight」は絶品。ハービーのソロ・ピアノはなかなか聴くことは出来ないが、こんなパッション溢れるハービーのソロは聴いたことが無い。1980年代仕様のハービーの純ジャズなモーダル・ピアノ。思わず聴き入ってしまう。
サウンドトラックの『Round Midnight』を最初に手に入れて聴いて、う〜ん、なんだかなあ、という印象を持ったのが正直なところ。その後、この『Other Side Of Round Midnight featuring Dexter Gordon』を手に入れて聴いて、合点がいった次第。やはり、純ジャズの演奏には、即興演奏としての「自由度と柔軟度」は必須ですね。
映画の方は、ジャズ者にとっては、なかなか良い感じの、判り易い映画かと。デックスが主演で良い味出してます。僕は以前、レーザーディスクで所有していました。今ではBSでやっていたものをハードディスクに残して楽しんでいます。
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