「無念」の最後のリーダー作 『Trompeta Toccata
哀愁のトランペッター、ケニー・ドーハム。キャッチフレーズの「哀愁の」については、ドーハムのワンホーンの名盤『Quiet Kenny』の印象が強くて「哀愁の」になるが、ドーハムって、もともとはビ・バップ時代から活躍する、筋金入りのバップ・トランペッター。基本は「溌剌としたバップなトランペット」。しかし、時々「フレーズがちょっと危うい」ところはご愛嬌。
そんなドーハム、1924年生まれ。しかし、1972年、腎臓病にて、48歳の若さでこの世を去っている。活動期間としては、初リーダー作が1953年、リーダー作の最後が1964年。活動期間としては僅か11年。それでも、20枚以上のリーダー作をリリースしているので、当時、人気のトランペッターだったことが窺える。
Kenny Dorham『Trompeta Toccata』(写真左)。1964年9月14日の録音。ブルーノートの4181番。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Joe Henderson (ts), Tommy Flanagan (p), Richard Davis (b), Albert Heath (ds)。筋金入りのバップ・トランペッター、ケニー・ドーハムの最終リーダー作。遺作になる。アンドリュー・ヒルの『Point of Departure』への全面参加で得た感覚をこの盤に反映している様な、当時のドーハムの新境地を感じることの出来る好盤。
パーソネルが面白い。ドーハム、フラナガン、ヒースの3人は、ビ・バップ最終期からの、いわゆる「旧人類」。ヘンダーソンとデイヴィスは新主流派の、いわゆる「新人類」。新旧入り乱れてのパフォーマンスになる。それでも、ドーハム、フラナガン、ヒースは、新しい「新主流派」の演奏にも適応出来る柔軟性を持ったジャズマン達。この盤でも、果敢に、当時最先端のモーダルなジャズにチャレンジしている。
アフロ・ラテン・リズムの曲あり、ファンキー&ブルージーな曲あり、ジャズ・ロック調のボッサな曲あり、ストレード・アヘッドな曲あり、曲想がバリエーションに富んでいますが、アルバム全体を覆っているのは「モード・ジャズ」志向な展開。曲毎の雰囲気は、明らかにハードバップな曲とは雰囲気が異なる。しかし、どれもがバッチリ「キマっている」感じは無くて、まだまだ発展性のノリしろがある、ドーハムとしては、発展途上の過渡的な演奏だと思う。
この後、ドーハムはどこへ行くのだろう、どんなジャズを聴かせてくれるのだろう、そんな期待感を持たせてくれる、ポジティヴで発展途上な内容だが、これが最後のリーダー作となってしまった。なんと残念なことか。まだまだ先のある、ポジティヴで発展途上な音に、ドーハムの新境地を聴き損ねた、そんな「無念」を僕は感じる。
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