モーダルな伝説の3管フロント。
1950年代後半、マイルスとビル・エヴァンスが始めたとされる「モード・ジャズ」。マイルスのバンドから派生したのは確実なようで、ここから、コルトレーンが、コルトレーンなりのモード・ジャズを始めた。それからは、マイルスとコルトレーンが中心になって、モード・ジャズが拡大する。
そして、このハードバップの老舗バンド、若手の登竜門「アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ」にも、モードの波がやってきた。その「モードの波」を持ち込んだのが、テナー奏者のウェイン・ショーター。ショーターは、マイルスとコルトレーンのモード・ジャズを参考にしつつ、ショーターなりのモード・ジャズを編み出している。
Art Blakey & The Jazz Messengers『Free For All』(写真左)。1964年2月10日の録音。ブルーノートの4170番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Freddie Hubbard (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b)。ハバードのトランペット、フラーのトロンボーン、ショーターのテナーが3管フロントのセクステット編成。ピアノはシダー・ウォルトン。
1961年10月の録音、Art Blakey & The Jazz Messengers『Mosaic』から始まった「ハバード〜フラー〜ショーターの「伝説の3管フロント」。この盤では3年以上が経過し、バンド・サウンドとしてもしっかりまとまって、円熟の極みのモード・ジャズがギッシリ詰まっている。
この「伝説の3管フロント」を擁したメッセンジャーズ。音楽監督はテナーのウェイン・ショーター。このショーターの生み出すモード・ジャズが、「アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ」のモード・ジャズとして定着した。
極端に例えると、コルトレーンのシーツ・オブ・サウンドをベースとした音の「連鎖と早弾き」を活かしたモード・ジャズとマイルスの音の「拡がりと間」を活かしたモード・ジャズの良いところをハイブリッドした感じのモード・ジャズがショーターのモード・ジャズ。但し、ユニゾン&ハーモニーの音の重ね方や、アドリブ・フレーズの「コズミック」な響きはショーター独特のもので、決して、コルトレーンとマイルスの物真似では無い。
そんなショーター流のモード・ジャズがこの盤でも炸裂している。特に、円熟味を増した「伝説のフロント3管」のユニゾン&ハーモニーは単純に「格好良い」。特に、フラーのモーダルなトロンボーンには驚く。あの速いフレーズや音の上げ下げが苦手な楽器で、いとも容易くショーターのモード・ジャズに適応している。
ブレイキー御大のドラミングをベースにしたリズム・セクションもショーターのモード・ジャズをしっかり理解し、しっかりモーダルなリズム&ビートを供給していて立派。特に、ウォルトンのピアノが良い。モーダルなピアノを自家薬籠中のものとしていて、この盤でははっきりと「ウォルトンなりのモーダルなピアノ」を聴き取ることが出来る。
そして、凄いなあ〜、と感心するのが、ブレイキー御大のドラミング。ショーターのモード・ジャズにしっかり適応し、「伝説の3管フロント」に追従するどころか、リードし鼓舞し、しっかりと支えるドラミングは見事の一言。そうそう、ワークマンのモーダルなベースも良いです。ショーターのモード・ジャズ独特の速いフレーズや音の上げ下げにしっかりと適応しています。
僕は、この時代の「アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ」が大のお気に入り。今でも、この盤の冒頭のタイトル曲「Free for All」の前奏の「伝説の3管フロント」のユニゾン&ハーモニーを聴く度に、ショーターのコズミックなモーダル・テナーを聴く度に、ワクワクしっぱなし、です。良いアルバムです。
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