ガーランドの「再訪」 『Red Garland Revisited!』
レッド・ガーランドは、ハードバップ時代、人気絶大のジャズ・ピアニストだった。1956年の初デビュー作『A Garland of Red』から、1962年、一時活動を中断する直前の『When There Are Grey Skies』まで、30枚ものリーダー作をリリースしている。
右手の転がる様に流麗なシングル・トーン、絶妙のタイミングでスイング感を醸成する左手のブロック・コード。シンプルな奏法だが、ガーランドの手にかかると、とても芳醇でハードバップなジャズ・ピアノになるから不思議。当時の人気のほども理解出来る。
しかし、ガーランドのリーダー作は「プレスティッジ・レーベル」に集中する。プレスティッジ・レーベルの出すアルバムの最大の特徴は、セッションの単位を無視して、幾つかのセッションの「あちらこちら」から曲を寄せ集めてアルバム化する「寄せ集め盤」が多いということ。ガーランドのアルバムにもそんな「寄せ集め盤」が多々あって、どの時点でのガーランドの演奏なのか、ちゃんと理解して聴かないと、曲毎に異なるニュアンスの違いが理解出来ない。
『Red Garland Revisited!』(写真左)。1957年5月24日の録音。プレスティッジの PR 7658番。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Kenny Burrell (g, tracks 3, 7), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。基本は、リーダーのガーランドのピアノ、チェンバースのベース、テイラーのドラムの「定番のトリオ」演奏。そのトリオ演奏に2曲だけ、バレルの漆黒アーバンなファンキー・ギターが入る。
この盤はプレスティッジには珍しく、単一セッションの録音でアルバムがまとめられている。が、この盤、録音当時はリリースされずにお蔵入り。12年を経て、1969年にリリースされている。
プレスティッジの総帥プロデューサー、ボブ・ワインストックについては、この辺の感覚が僕には理解出来ない。聴くと判るが、内容的に全く問題が無い、どころか、ガーランドのピアノも好調、バレルの参加も効果的、という感じなのだが、どうして12年もの間、倉庫に眠っていたのか。
タイトルに「Revisited!(再訪)」とあるのだが、何故「再訪」だったのか、その理由は定かでは無い。恐らく、前述の様に12年もの間、お蔵入りしていて、1969年にようやくリリースしたので「再訪」としたのかもしれない。全く、罪作りなプレスティッジである。
さて、その内容であるが、名盤『Groovy』を録音した時と同時期の演奏なので悪かろう筈が無い。ガーランド、チェンバース、テイラーのトリオは絶好調。2曲に加わるバレルも良い味を出している。
テンポのいい曲とスロー・バラードがバランスよく配置されていて、バレルの入るカルテットの演奏も、バレルがホーンの代わりをしていて、良い耳直し的な演奏になっている。チェンバースが弾くベース・ラインがメロディアスで素晴らしく、テイラーのドラミングは柔軟で小粋。
テンポの良い曲での、ガーランドの右手、転がる様に流麗なシングル・トーンが走る様には、思わず体がスインギーに動く。スロー・バラードでは、ガーランドの左手、絶妙のタイミングでスイング感を醸成する左手のブロック・コードが小気味良く、思わずじっくりと聴き入ってしまう。
ギター入りのカルテット演奏も良いアクセントになっていて、ガーランドのトリオ演奏としても非常に良好。この音源がセッションごとお蔵入りになっていた理由が判らない(笑)。ピアノ・トリオとしても絶妙な好盤だと思う。
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