ドーハムとマクリーンの相性は...『Matador』
ケニー・ドーハムのリーダー作の落ち穂拾いをしている。今日は、ドーハムの活動後半、後半も後半、最終リーダー作の『Trompeta Toccata』(1964年)の1枚前のリーダー作を取りあげる。
Kenny Dorham『Matador』(写真)。1962年4月15日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Jackie McLean (as), Bobby Timmons (p), Teddy Smith (b), J.C. Moses (ds)。リーダーのケニー・ドーハムのトランペットとジャキー・マクリーンのアルト・サックスがフロント2管のクインテット編成。ピアノにファンキー・ピアニスト、ボビー・ティモンズの名前が見える。
ドーハムの活動の最終期、リアルタイムでリリースされたリーダー作としては「ラス前」である。ドーハムのトランペットは、相変わらず、ハードバップしていて元気溌剌。バリバリ吹きまくっている。が、ちょっと元気が無いかな、と思うところが見え隠れ。
それは、マクリーンのアルト・サックスに原因がある。この盤でのマクリーンは絶好調。ちょっとピッチの外れた独特の音色で、マクリーンはどこかモーダルな響きのするフレーズを吹きまくる。これが目立ちに目立っている。
ドーハムは従来のハードバップな吹きっぷりなので、流麗かつメロディアス。耳に優しく聴き心地の良いフレーズ。マクリーンはどこかモーダルな吹きっぷりなので、緩急自在、強弱自在、どこかゴツゴツしてたり、音の拡がりや奥行きがダイナミックだったりで、耳にしっかり響き、フレーズの印象が強く残る。そういうところから、この盤ではマクリーンの方が目立ってしまっている。
しかし、目立ったからといって、マクリーンの吹きっぷりに問題は無い。マクリーンのベスト・プレイに近い吹きっぷりで、この盤がマクリーンのリーダー作だったら、至極納得である。
ドーハムのトランペットについては、問題は無いのだが、従来からのハードバップな吹きっぷりを全く変えていない分、印象が薄まり、マクリーンと比べて、ちょっと損をしている。確かにマンネリと言えばマンネリ気味かな。
そして、意外とピアノのティモンズが活躍している。ミスター・ファンキーなピアノのティモンズ、しっかりとファンクネスを漂わせた躍動感溢れるバッキングは、しっかりとフロント2管を鼓舞する。
そして、どこかスパニッシュ・ムード漂うアルバム全体の雰囲気をしっかりと「ファンキーな純ジャズ」に着地させている。加えて、どちらかと言えば弱いと言わざるを得ないベースとドラムのリズム隊に代わって、演奏全体のリズム&ビートを統率しているのは見事。
ドーハムとマクリーン、好対照のフロント2管の相性を「良し」とするか「否」とするかで、評価の軽重が分かれるアルバムの内容かと思います。ハードバップ盤としては及第点以上。躍動感もあり、フロント2管それぞれの個性ははっきり出ていて、バックのリズム隊もピアノの大活躍で水準以上をキープ。ジャズの多様化の時代における「ユニークな内容の好盤」だと思います。
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