ポール・モチアン・トリビュート
ポール・モチアンと言えば、ビル・エヴァンス、キース・ジャレットとの共演の印象が強くて、正統派スインギーな純ジャズ系のドラマーというイメージがある。
そんなモチアンとECMというのは、ちょっと違和感があるのだが、モチアンって、現代音楽っぽい前衛的なジャズや、スピリチュアルなジャズが得意だったりするので、モチアンとECMって、そういう面で相性が良かったのだろう。
ポール・モチアンとECMとの関係は、1970年代、ECMレーベルが活動を始めた頃から、1981年まで、5枚のリーダー作を残している。そして、一旦、ECMを離れるが、21世紀に入って、2004年に『I Have the Room Above Her』を録音して、ECMにカムバック。亡くなる2年前にも『Lost in a Dream』を録音している。
Jakob Bro & Joe Lovano『Once Around The Room - A Tribute To Paul Motian』(写真左)。2021年11月、コペンハーゲンでの録音。ちなみにパーソネルは、Jakob Bro (g), Joe Lovano (ts, Tarogato), Larry Grenadier, Thomas Morgan, Anders Christensen (b), Joey Baron, Jorge Rossy (ds)。
2011年に惜しまれながら鬼籍に入った、多くの名盤に携わった偉大なジャズ・ドラマー、ポール・モチアンのレガシーをトリビュートする作品。いかにも、未だ硬派なメインストリーム・ジャズ専門のレーベル、ECMらしい企画盤である。
さて、このトリビュート盤、フロント楽器として、デンマーク出身の異能のギタリスト、ヤコブ・ブロと、ベテラン・サックス・プレイヤーのジョー・ロヴァーノ。リズム隊は、ベーシストが3人、ドラマーが2人、曲ごとに編成を変えながらの録音になっている。
演奏はインテリジェンス溢れる、陰影と音の「間」に富んだ即興演奏。静的でクリスタル、クールな熱気溢れるECMらしい即興演奏。
ヤコブのギターは内省的で静的な、墨絵の様な拡がりと陰影を持った音で印象的。ロヴァーノのテナーは、力感&情感溢れるストレートでクールな吹きっぷり。静のヤコブのギターと、動のロヴァーノのテナーとの対比がとても美しい。
ベースとドラムのリズム隊は、曲毎に交代して担当しているが、出てくるリズム&ビートの雰囲気は、明らかに「ポール・モチアン」。モチアンのドラミングって、機微、抑制、音色のバラエティーに熟練しているんだが、そんな達人的なリズム&ビートをしっかりと再現しつつ、それぞれの個性もしっかり反映する。なかなかに優れたリズム隊の面々。
ポール・モチアンって、ジャズ・ドラミングにおける、一流のスタイリストの1人やったんやなあ、と改めて感心する。そして、さすがはECM、ポール・モチアンのソロ・リーダー作の個性と特徴である「現代音楽っぽい前衛的なジャズ」や「スピリチュアルなジャズ」をしっかりと再現し、ECMジャズとして完結させている。
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