マクリーンのモード・ジャズ盤
ブルーノートの4100番台は、1961年後半から1965年前半の録音がメイン。ブルーノートは、聴き手に訴求するジャズの様々なニーズに応えて、成熟したハードバップを基とした「ジャズの多様化」について幅広く対応している。「売れるジャズ」であるファンキー&ソウル・ジャズばかりで無く、ジャズの芸術性の面を追求したモード・ジャズやフリー・ジャズにも力を入れていた。この辺りが、ブルーノートの凄いところである。
特に、モード・ジャズには造詣が深い。モード・ジャズと言えば、その創始とされるマイルス・ディヴィスやビル・エヴァンス、そして、ジョン・コルトレーンの名前ばかりがクローズアップされるが、モード・ジャズの担い手はかなりの数がいる。そのほとんどをブルーノートがカヴァーしている。他のレーベルについては「モードは売れない」と思ったのか、あまり力を入れていない。
Jackie McLean『Destination... Out!』(写真左)。1963年9月20日の録音。ブルーノートの4165番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Grachan Moncur III (tb), Bobby Hutcherson (vib), Larry Ridley (b), Roy Haynes (ds)。フロント2管が、リーダーのマクリーンのアルト・サックスと、モンカーのトロンボーン、ハッチャーソンのヴァイブ入りのピアノレス・クインテット編成。
モンカーとハッチャーソンがいるので、基本はモード・ジャズだろう、ということは想像が付く。ハッチャーソンのヴァイブがいるので、モードからフリーをやるには、ピアノはフレーズがぶつかる可能性がある。だからピアノレス。ロイ・ヘインズのドラムはモードからフリーに完全対応可能。ベースのラリー・リドリーだけが、僕にとって「謎の人」である。
モンカーとハッチャーソンのモーダルな感覚をベースに、マクリーンのモード・ジャズが展開される。マクリーンのモード・ジャズは革新的では無い。伝統的なジャズのインプロのマナーに軸足を残した、半分自由、半分伝統的な、ちょっとどこかもどかしいモーダルなフレーズが個性的。
恐らく、オーネット・コールマンの影響を受けたのであろう、伝統的なジャズには「ありえないフレーズ」、「無かったリズム&ビート」を繰り出して、他のモーダルなジャズとの差別化を実現している。
どこか伝統的な響きが残るモード・ジャズだが、あくまでマクリーン・オリジナルなモード・ジャズだし、モーダルな新主流派の尖った傑作ではある。モンカーも自らのリーダー作より、伸び伸び、モーダルでフリーキーなフレーズを吹きまくっている。ハッチャーソンの尖ったヴァイブも切れ味良く躍動感がある。
恐らく、完全にモーダルで完全にフリーな、どこかヒリヒリした雰囲気では無く、どこか伝統的な響きが残る、どこか温かみのある雰囲気が安心感につながって、各メンバーの伸び伸びとしたパフォーマンスを引き出しているような気がする。
マクリーンのモード・ジャズは、あくまでマクリーンのオリジナル。モード・ジャズとして、しっかりと内容があり、しっかりと個性を確立している。1950年代の歌心溢れるハードバップなマクリーンも良いが、モード・ジャズを通して、ジャズの即興演奏の妙を追求するマクリーンも頼もしい。
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