前半のペッパーの成熟を感じる 『Intensity』
ジャズを本格的に聴き始めた頃、今を去ること40年以上前から、アート・ペッパーがずっとお気に入りのジャズマンである。振り返れば『Art Pepper Meets the Rhythm Section』(1957年, Contemporary)を聴いて、一発でお気に入りになった。そして『Among Friends』(1978年, Interplay)で確信に変わり、以来「ペッパー者」として、リーダー作を追いかけてきた。
アート・ペッパーは、1960年代後半を薬物中毒者のためのリハビリテーション施設シナノンで過ごした。この長いブランクを境に、前半のペッパーと後半のカムバック後のペッパーとに分かれる。
前半のペッパーは「米国ウエストコーストのハードバップ」で、後半のペッパーは「コルトレーン・マナーなモード・ジャズ」。ただし、流麗でハイテクニックな吹き回しは前後半共通で、どちらが優れているか、なんていう不毛な議論もあった様だが、前半のペッパーも、後半のペッパーも「ペッパーそのもの」。
Art Pepper『Intensity』(写真左)。1960年11月23–25日の録音。Contemporaryレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Art Pepper (as), Dolo Coker (p), Jimmy Bond (b), Frank Butler (ds)。米国西海岸ジャズ時代、いわゆる「前半のペッパー」。ペッパーがフロント1管の「ワンホーン・カルテット」である。
「前半のペッパー」は押し並べて、ペッパーのブロウだけを楽しめる内容のリーダー作が多いのだが、この盤はまさに「それ」。もともと「ワンホーン・カルテット」なので、ペッパーのアルト・サックスが目立つが、ピアノ以下のリズム隊は米国西海岸ジャズ畑からのメンバーだが少し地味なので、聴きどころは「ペッパーのアルト・サックス」のみ、な内容。
冒頭の「I Can't Believe That You're in Love with Me」を聴けば、ベースをバックにペッパーのアルト・サックスがスッと入ってきて、すぐにドラムが加わり、やがてピアノも加わり、バンド全体で、米国西海岸ジャズ独特の、聴き応えのあるアンサンブルへ展開。その後、ペッパーの流麗で力強く軽快なアドリブ・フレーズがブワーッと吹き上げられる。ペッパーのアルト・サックスの印象が強く残るアレンジと構成が見事。
他の曲でもペッパーのアルト・サックスは好調。お洒落で小粋で軽快なフレーズをバンバン吹き上げている。フレーズについては、ペッパーの手癖に近いものがメインなので、聴けば直ぐにペッパーだと判るし、この1960年の録音時点で、「米国ウエストコーストのハードバップ」なペッパーのアルト・サックスは成熟し切っている。
この盤を録音した頃は、ペッパーは既に重度の麻薬中毒状態で、さんざんな生活を送っていた時期。それでも、録音の時には何とかシャンとしていた様で、この盤でも、麻薬禍などという状況は微塵も感じさせること無く、お洒落で小粋で軽快なフレーズを好調に吹きまくっている。「前半のペッパー」の演奏家としての成熟を感じ取ることが出来る好盤だと思います。
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