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2023年6月25日 (日曜日)

大衆音楽志向なキャノンボール

キャノンボール・アダレイの初期のアルバムの落ち穂拾いの3日目。キャノンボールは初リーダー作こそ、サヴォイ・レーベルからだったが、2枚目のリーダー作から、いきなり大手のジャズ・レーベル「エマーシー」からのリリースになる。それからは、リヴァーサイド・レーベルの専属になる。

ハードバップ期において、若手有望株の登竜門と言われた「ブルーノート」からは、マイルスの下、1枚のリーダー作(実質はマイルスがリーダー)しかリリースしていない。それだけ、デビューした時には、その個性とテクニックが完成〜確立されていて、十分に聴き手に訴求し、レーベルからしても「売れる」アルト・サックス奏者だったのだろう。

Cannonball Adderley『In The Land of Hi-Fi with Julian Cannonball Adderley』(写真左)。1956年6月8, 18日の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Jerome Richardson (ts, fl), Danny Bank (bs), Nat Adderley (cornet), Ernie Royal (tp), Bobby Byrne, Jimmy Cleveland (tb), Junior Mance (p), Keter Betts (b), Charles "Specs" Wright (ds), Ernie Wilkins (cond, arr)。

この盤も2枚目のリーダー作、エマーシーからの第1弾と同じ大編成での録音。この盤は「テンテット(10人編成)」である。この盤も大編成の録音で、アレンジの志向、音の雰囲気としては「ビッグバンドで豪華」なもの。
 

Cannonball-adderleyin-the-land-of-hifi-w

 
但し、エマーシーからの第1弾のアレンジを担当していたのは、クインシー・ジョーンズだったので、そのアレンジは粋でジャジーでモダンなものだったが、この盤のアレンジはアーニー・ウィルキンスが担当しており、そのアレンジは破綻は無いし、稚拙でも無いのだが、イージーリスニングっぽいビッグバンドな雰囲気で俗っぽい。

バックの演奏は、あくまでキャノンボールのアルト・サックスを引き立てるだけの演奏で、バンド全体で、丁々発止としたインタープレイが展開されることは無い。演奏時間は1曲当たり数分程度と短く、一般大衆の方々が聴くに我慢できる長さに抑えられている。如何にジャズ者以外の一般大衆に「売りたかった」かが、このバックバンドのアレンジを聴くと良く判る。

しかし、この盤でも、そんなバックのアレンジにはお構いなく、キャノンボールは伸び伸びと「滑らかで饒舌、伸びのあるブリリアントなブラスの響き、流麗かつ爽快感溢れる運指テクニック、歌心溢れるアドリブ・フレーズ」が個性のアルト・サックスを吹きまくる。ただ、ハードバップの醍醐味の1つである「インタープレイ」「ロングなアドリブ展開」が無いので、スリルは希薄、聴き心地だけが優先されているのは「モダン・ジャズ」としてはちょっとなあ、という感じ。

スイング時代の演奏志向の演奏を聴いている感じは否めない。それでも、キャノンボールのアルト・サックスは魅力的なフレーズをバンバン繰り出し、ジャズとしての心地良いテンションやアドリブ展開の妙を積極的に醸し出していて、単に聴き心地の良い「イージーリスニング・ジャズ」になっていないところが良い。
 
 

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