マクリーンのハードバップな好盤
ジャッキー・マクリーンは、デビュー当初は、典型的なハードバップなアルト・サックス奏者だった。但し、マクリーンのアルト・サックスの音色には「違和感に似た個性」がある。フレーズのところどころのピッチが合っていない。ピッチがフラットする。クラシックの吹奏では絶対にあり得ないピッチのずれ。しかし、これがマクリーンの最大の個性なのだ。
Jackie McLean『Jackie's Pal』(写真左)。1956年8月31日の録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Bill Hardman (tp), Mal Waldron (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。マクリーンのリーダー作の第5作目。マクリーンのアルト・サックスとビル・ハードマンのトランペットがフロント2管のクインテット編成。
バックのリズム・セクションに、孤高のバップ・ピアニスト、マル・ウォルドロン、ベースにポール・チェンバース、ドラムにフィリー・ジョー・ジョーンズ。特に、マルのピアノ参加が目を引く。ハードバップでのファースト・コールなポルチェンのベースとフィリージョーのドラムと組んで、どんな弾きっぷりになるのか。
この盤のマクリーンもテクニック優秀、フレーズの歌心も良い感じ。既にフレーズのところどころでピッチがフラットしている。まだ、全盛期の様にほとんどフラットはせず、要所要所でフラットしている程度だが、明らかにフラットしている。1曲目の「Sweet Doll」のアルト・サックスのアドリブ・フレーズを聴くだけで、直ぐに「マクリーン」と判る位の強烈な個性。このピッチのズレが、意外と良い「味」になっていて、マクリーンの吹奏を特別なものにしている。
トランペットのビル・ハードマンとマクリーンは、ジャズ・メッセンジャーズでの盟友。この盤でも息の合ったユニゾン&ハーモニー、息の合ったアンサンブルを聴かせてくれる。ハードマンのトランペットは特にこれといった「癖」の無い、素姓の良い端正なトランペット。ブリリアントな音色がいかにも「ハードバップ」な雰囲気を醸し出す。
そして、意外と聴きものだったのが、マルのピアノ。この「こってこて」ハードバップな演奏で、マルはちょっとアウトな弾きっぷりを封印し、端正で歌心溢れるピアノ伴奏を披露する。聴き心地抜群、そのテクニックに耳を奪われる、見事なマルのハードバップなピアノ。
そこに、名手な2人、ポルチェンのベースとフィリージョーのドラムがガッチリとリズム&ビートを供給して、それはそれは、素晴らしいバッキングを披露する。特に、フィリージョーのドラムが好調で、ハードバップな雰囲気を更に増幅している。
ジャケも「やっつけ」のプレスティジらしからぬ、まずまずのデザインで良好。しかし、タイトルを途中、New Jazzからの再発時に『Jackie's Pal』(写真左)から、味もしゃしゃらもない『Steeplechase』(写真右)に変えている。理由は判らないが改悪。1991年のCDリイシュー時にオリジナルのタイトルに戻されて良かった良かった。
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