ワシントン・ジュニアの『訪れ』
グローヴァー・ワシントンJr.(Grover Washington Jr.、以下「ワシントンJr.」と略)。スムース・ジャズの父、フュージョン・ジャズにおけるサックスの帝王。
そんなワシントンJr.が一番ポピュラーなアルバムをリリースしたのが「エレクトラ時代」。作品的には1979~1984年のリリース。「スムース・ジャズの父」と呼ばれるに相応しいアルバムを5作品リリースしているが、かの有名な『Winelight』もそんな中の一枚。
この『Winelight』だけが突出して扱われるので、ワシントンJr.は「一発屋」と誤解されることが多いが、どうして、エレクトラ時代の他の4枚も、スムース・ジャズの父」と呼ばれるに相応しいどれもが出来は上々。
Grover Washington Jr.『The Best Is Yet To Come』(写真)。邦題『訪れ』。1982年の作品。ちなみにパーソネルは、であるが、この作品、曲毎にパーソネルが異なるので、詳細は割愛する。主だったところをピックアップすると、Richard Tee (key), Eric Gale (g), Marcus Miller (b), Ralph MacDonald (perc) 等々、フュージョン畑の強者どもがしっかり参加している。
内容的には前々作の大ヒットアルバム『Winelight』の路線を踏襲している。ビル・ウィザースの名唱入りのヒット曲「Just the Two of Us(クリスタルの恋人たち)」に味を占めた訳では無いだろうが、このアルバム『訪れ』には、ボーカル入りの曲が3曲も入っている。
メロウでグルーヴ、パティ・ラベルの名唱入りのタイトル曲「The Best Is Yet To Come」。ブラジリアン・スタイル、ボビー・マクファーリンの名唱入りの「Things Are Getting Better」。アーバンでソウルフルな雰囲気濃厚、セドリック・ナポレオンの名唱入りの「I'll Be With You」。
いずれのボーカル入り曲も、フュージョン・ジャズの「ツボ」を押さえていて、なかなかの出来。特に、バックの、フロント管、リズム・セクション含め、ソフト&メロウな「R&B志向」のパフォーマンスがとても心地良い。特にベース、ドラム、パーカッションがそこはかとなく効いている。
他のインスト曲は充実硬派なフュージョン・ジャズ。決して、イージーリスニングに流れない、ソフトにライトに、がっつりジャズ・ファンクしたパフォーマンスは見事。
ワシントンJr.は、相も変わらず、ソフィスティケイトされたサックス・ソロを聴かせる。トロピカル色豊かな、ソフト&メロウなフュージョン・チューン「More Than Meets The Eye」が特に良い感じ。
『Winelight』ばかりがクローズアップされるので、ちょっと地味な印象のアルバム『訪れ』であるが、ワシントンJr.をはじめ、フュージョン畑の名手達が腕によりをかけて、素晴らしいフュージョン・パフォーマンスを披露している。聴けば聴くほどに味わい深くなる好盤です。
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