最後のブルーノート盤 『Rockin' the Boat』
ジャズ・オルガンと言えば、まずは「ジミー・スミス(Jimmy Smith)」である。オルガンをジャズのメイン楽器として定着させ、ジャズ・オルガンの音色・奏法・テクニックの基準・標準を確立させたレジェンド・ジャズマン。ジャズ・オルガンの開祖は、このジミー・スミスであり、ジャズ・オルガンの「最初の基準」である。
ジミー・スミスは、マイルスに紹介され、ブルーノートの総帥ディレクター、アルフレッド・ライオンに見出され、ブルーノートからアルバム・デビューしている。1956年の初リーダー作以来、ブルーノート一本槍。
1962年、さらなる好条件を提示した大手レーベル・ヴァーヴに移籍する。自分が育てたジャズマンが条件の良い大手レーベルに移籍していくことを、ライオンは一切止めることは無く、喜んで送り出したくらいだそう。スミスはその恩義を忘れず、かなりの数の優れた内容の録音を残していった。
Jimmy Smith『Rockin' the Boat』(写真左)。1963年2月7日の録音。ブルーノートの4141番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Lou Donaldson (as), Quentin Warren (g), Donald Bailey (ds), "Big" John Patton (tambourine, tracks 2, 3 & 6)。録音日から見て、この盤は、大手レーベル・ヴァーヴに移籍する直前、ブルーノート契約配下での「最後の録音」の1つになる。
寛いだファンキーなオルガン・ジャズ。ギターのクエンティン・ウォーレン、ドラムのドナルド・ベイリーは、昔から馴染みのリズム隊。このトリオ演奏だと「またか」的な、ちょっと飽きだぞ、という印象になるが、この盤はそうはならない。ゲスト参加的位置づけのフロント1管、ルーさんのアルト・サックスが良いアクセントになっている。
ルーさんのアルト・サックスは、ファンキーで「ネアカ」でブリリアントで溌剌とした音色なので、ジミー・スミスのオルガンの音に負けることは無い。ジミー・スミスは、フロント管がいる場合、フロント管を鼓舞しサポートする役回りに積極的に対応するので、フロント管不在の時の弾きすぎる、攻撃的なオルガンは程良く押さえられて、とっても趣味の良い、リラックスして楽しげにオルガンを弾くジミー・スミスが聴ける。
ゴスペル、C&W、R&B、ブルース、ソウル、カリプソの要素を取り込んだ、ファンキーなオルガン・ジャズが聴いていて楽しい。時代は「ジャズ多様化の時代」。ジミー・スミスとアルフレッド・ライオンは、この盤では「娯楽音楽としてのファンキー・ジャズ」を追求し、ものにしている。
どう転んでも「売れる」盤としたかったのではないか、と睨んでいる。この時期、一連のブルーノートでの録音を残して、ジミー・スミスはヴァーヴに移籍する。この盤に収録された音源は、ジミー・スミスのブルーノートに対する「感謝の置き土産」である。
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