モブレー根明なモード・ジャズ
ハンク・モブレーのテナーも、その演奏志向のブレは無かった。もともと、こってこてのハードバップ。そして、モブレーのテナーの個性を活かしたモーダルなジャズへの変化。基本はモダン・ジャズの王道、ど真ん中を行くものだった。少なくとも、ポップなジャズ志向、ファンキー・ジャズやソウル・ジャズ、ジャズ・ロックに転身することは無かった。
Hank Mobley『A Caddy for Daddy』(写真左)。1965年12月18日の録音。ブルーノートの4230番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Curtis Fuller (tb), Lee Morgan (tp), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds)。
フロント3管は、ハードバップ初期から第一線で活躍してきた、ブルーノート・ファミリーなジャズマン3人、リーダーのモブレー、トランペットのモーガン、トロンボーンのフラー。バックのリズム・セクションは、新進気鋭のモード・ジャズが得意な若手トリオ。
冒頭のタイトル曲「A Caddy for Daddy」を聴くと、あれれ、と思う。リー・モーガンがやるようなジャズ・ロックな演奏。おお、遂にモブレーもポップなジャズ志向に舵を切ったか、と思うのだが、2曲目の「The Morning After」以降を聴くと、やっぱり、ポジティヴで根明なモード・ジャズで貫いている。
どうも冒頭のジャズ・ロックな「A Caddy for Daddy」は、ジュークボックスやラジオ用のシングル・カット対象の演奏だったのだろう。やっぱり、少しは売れないとブルーノートの屋台骨を支えられないからなあ。モブレーには似合わない様に感じるジャズ・ロックな演奏だが、意外と喜々と演奏しているモブレーが微笑ましい。やっぱり、モーガンとの相性が抜群なんだろうな。
2曲目以降のポジティヴで根明なモード・ジャズは見事な演奏。というか、まず、曲が良い。モーダルなフレーズ展開を前提としたモブレーの書く曲がどれも良好。3曲目だけ、ウェイン・ショーター作の「Venus Di Mildew」なんだが、この盤の2曲目以降のモーダルな演奏についてはしっかりとした統一感があって、違和感が無い。逆に、1曲目のジャズ・ロックな演奏に違和感を感じる位だ。
プロデュースは、この盤ではまだ、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンが担当しているので、モダン・ジャズとして、硬派な内容はしっかりと維持されている。
モブレー&モーガンはバリバリとモーダルなフレーズを連発し迫力満点。意外だったのは、カーティス・フラーがモーダルなジャズに適応していること。フラーがモーダルなフレーズを吹きまくるなんて思いもしなかった。この盤ではトロンボーンの特性を活かした、音の拡がりと浮遊感を宿したモーダルなフレーズを連発している。
しかし、このジャケットはなあ。来たるべき、サイケデリックで、ラヴ&ピースな雰囲気濃厚のジャケ。タイポグラフィーは辛うじて往年のアーティスティック度を維持しているが、ここまでジャケット・デザインが俗っぽくなるとはなあ。
ジャケはとほほ、だが内容は充実。ブルーノート・レーベルにとって、モダン・ジャズにとって、苦しい時代に突入した時代の、それでいて、アーティスティックな「ブルーノート・ジャズ」としての矜持を維持した、傾聴に値する内容だと思う。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて
★ まだまだロックキッズ 【New】 2022.12.06 更新
・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。
★ 松和の「青春のかけら達」
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から12年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« 演奏志向にブレが無い 『Jazz Contemporary』 | トップページ | 不思議なトロンボーンの企画盤 『Trombone By Three』 »
« 演奏志向にブレが無い 『Jazz Contemporary』 | トップページ | 不思議なトロンボーンの企画盤 『Trombone By Three』 »
コメント