懐かしの『Grand Cross』です
最近、Electric Birdレーベルのアルバムを漁っては聴いている。1970年代後半にキングレコードが立ち上げた、純国産のフュージョン専門レーベル。目標は「世界に通用するフュージョン・レーベル」。ちょうど、フュージョン・ブームのピークに近い時期に立ち上げられたレーベルで、リアルタイムで聴いてきたフュージョン者の我々としては、とっても懐かしいレーベルである。
David Matthews『Grand Cross』(写真)。1981年の作品。Electric Birdレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、David Matthews (el-p, arr), Michael Brecker (ts), David Sanborn (as), Randy Brecker (tp, flh), John Tropea, Larry Carlton (el-g), Cliff Carter (el-p. syn), Marcus Miller (b), Steve Gadd (ds), Sammy Figueroa (perc)。プロデューサーも、デイヴィッド・マシューズが担当している。当時のフュージョン畑の一流ミュージシャンが一堂に会したオールスター・セッションの様な内容。
冒頭のタイトル曲「Grand Cross」のイントロから凄い。一糸乱れぬ、スピード感溢れる、高テクニックなユニゾン&ハーモニー。そして、アドリブ展開部に入って、疾走感溢れる切れ味の良い、サンボーンのアルト、マイケル・ブレッカーのテナー、そして、ランディ・ブレッカーのトランペット。ファンクネス度濃厚なジャズ・ファンク。う〜む、これは「ブレッカー・ブラザース」の音。否、ブレッカー・ブラザースより重厚で爽快。
そして、マーカス・ミラーのベース、ガッドのドラムの重量級リズム隊がガンガンに、ファンキーなリズム&ビートを供給する。この冒頭の1曲だけでも、この盤は楽しめる。こんなに濃密な内容のジャズ・ファンクは、そうそう聴くことは出来ない。マシューズのプロデュース、恐るべし、である。マシューズのキーボードもファンク度が高い。
この盤、レゲエ〜ラテン〜アフロなフュージョン・サウンドが楽しいのだが、特に、レゲエを基調とした楽曲が3曲ほどあって、これが良いアレンジ、良い演奏で楽しめる。当時、流行のビート「レゲエ」。
2拍子のユッタリしたレゲエのオフビートは、演奏力が低いと冗長、冗漫になって、間延びした聴くに堪えない演奏になったりするのだが、さすがにこの当時のフュージョン畑の一流ミュージシャン面々、絶対にそうはならないところが凄い。特に、リアルタイムでこの盤を聴いていた僕達にとっては、このレゲエ調の楽曲って馴染みが深くて懐かしい。
カールトンとトロペイのエレギが良い音を出している。特に、レゲエ調の曲でのカッティングや、ジャズ・ファンク調の曲でのファンクネス溢れるソロなど、惚れ惚れする。カールトンもトロペイもフレーズを聴けば、すぐにそれと判る個性的な弾きっぷりで勝負しているところが実に高感度アップである。ほんと良い音だすよね。
デヴィッド・マシューズのアレンジ優秀、プロデュース優秀。これだけのメンバーを集めて、単なるオールスター・セッションにならずに、演奏の志向をきっちり共有化して、まるでパーマネント・グループの様なサウンド志向の統一感と演奏の一体感が発揮しているのは、やはりマシューズの統率力の「たまもの」だろう。
和製のフュージョン・ジャズとしての優秀盤、エレクトリック・バードの代表盤として、この盤は外せない。とにかく「痛快」な内容である。
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