特別にユニークなサックス奏者
1950年代から60年代のブルーノート・レーベルのカタログには、他のレーベルには見られない、「これ誰?」レベルのユニークなジャズマンのリーダー作がある。
ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンが、いろいろな人から紹介を受け、自分の耳で確認して、これは、というジャズマンに声をかけてリーダー作を作らせる。誰でも良い訳では無い。「ライオンの考えるジャズ」の吟線に響いて、ライオンが「モダンでクールなジャズだ」と思うジャズマンの演奏だけがチョイスされる。
これが、振り返ってみると、1950年代から60年代のジャズの「隙間を埋める」役割をしているのだ。有名盤が奏でるジャズばかりが「モダン・ジャズ」では無い。この「ライオンの考えるジャズ」のマイナーなジャズマンのパフォーマンスも、当時の「モダン・ジャズ」の一部なのだ。
つまり、ジャズは意外と、バリエーションが豊かで裾野が広く、奥深い音楽ジャンルだと言うことを、1950年代から60年代のブルーノート・レーベルのカタログは教えてくれる。
George Braith『Two Souls In One』(写真左)。1963年9月4日の録音。ブルーノートの4148番。ちなみにパーソネルは、George Braith (ss, stritch), Billy Gardner (org), Grant Green (g), Donald Bailey (ds)。ギター入りオルガン・トリオをバックに、ユニークなリード奏者、ジョージ・ブレイスがフロント1管のカルテット編成。
ジョージ・ブレイスは、NY出身のソウル・ジャズ・サックス奏者。1939年6月生まれなので、今年で84歳。初リーダー作が1963年だから、今年で60年間の間にリーダー作が12枚なので、寡作ではある。
ブレイスの一番の特徴は「ローランド・カークが開発したテクニックで、循環呼吸を活用して、一度に複数の管楽器を演奏する」ところ。この盤では、ブレイスはソプラノとストリッチを同時に吹いている。これがユニークというか、僕はこれを面白く、興味深く聴ける。まあ、好き嫌いはあるとは思う。
この循環呼吸を活用したソプラノ・サックスとストリッチの2本を同時に吹いて、ユニゾン&ハーモニーを奏でる。その奏でるフレーズが、ソウル、ラテン、カリプソ。小難しい速いフレーズは全く無く、旋律がハッキリ判るシンプルでユッタリしたフレーズで攻めるので、管の2本同時吹奏の音の個性が良い方向に作用している。
そして、この盤の聴き応え支えているのが、ビリー・ガードナーのオルガンとグラント・グリーンのギター。この二人の気合いの入った弾き回しが凄い。ちょっとユッタリのんびりしたブライスのフレーズをがっちりサポートして、アルバムの演奏全体を引き締めている。
ユニークな内容のアルバムです。硬派なジャズ者の方々、綺麗なユニゾン&ハーモニーの愛好家の方々からは、もしかしたら、ブレイスのフレーズは許しがたいか、とも思います。が、かなり巧妙な音の重ね方で、とてもジャジーでブルージーなのでは、とも思います。アルバム全体の出来としては、なかなかのソウル・ジャズ盤だと僕は評価してます。
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