ガッド・ギャング再び、である。
伝説のフュージョン・バンド「スタッフ(Stuff)」、ガッド率いるソウル・フュージョンなバンド「ガッド・ギャング(The Gadd Gang)」は、僕の大のお気に入りのクロスオーバー&フュージョン・ジャズ志向のバンドである。
スタッフとガッド・ギャングはメンバーが結構、重複していて、両バンド共通のメンバーは、ドラムのスティーヴ・ガッド、キーボードのリチャード・ティー、ギターのコーネル・デュプリーが共通。しかし、キーボードのティーとギターのデュプリーは他界してしまった。もはや、スタッフやガッド・ギャングのオリジナル・メンバーでの再結成は永遠に無い状態である。
しかし、スティーヴ・ガッドは今も元気である。今回、ガッド・ギャングのメンバーから、ベースのエディ・ゴメス、バリトン・サックスのロニー・キューバを、ゲストに、ギターのブルーノ・ミュラー、キーボードのボビー・スパークス、ジモン・オスレンダーを招いて、ガッド・ギャングの再現を実現した。
Steve Gadd, Eddie Gomez & Ronnie Cuber feat. WDR Big Band『Center Stage』(写真左)。2022年1月30日ー2月3日、ドイツのケルン「WDR Studio 4」での録音。
ちなみにパーソネルは、Steve Gadd (ds), Eddie Gomez (b), Ronnie Cube (bs), Bruno Mülle (g), Bobby Sparks II (Hammond B3, Rhodes), Simon Oslender (p, Hammond B3), Michael Abene (cond, arr), WDR Big Band。
伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」のレパートリーでもあった、スティーヴィー・ワンダーの「Signed, Sealed, Delivered」やボブ・ディランの「Watching the River Flow」、ガッド率いるソウル・フュージョンなバンド「ガッド・ギャング」のレパートリーから「I Can't Turn You Loose」「Che Ore So'」「Them Changes」「Way Back home」「Lucky 13」「Honky Tonk/I Can't Stop Loving You」「My Little Brother」等の懐かしの名曲を再演している。
「スタッフ」や「ガッド・ギャング」の従来のファンからすると、この盤の演奏内容は「堪らない」ものになっている。しかも、バックに、西部ドイツ放送「WDR」が運営する、現役バリバリのビッグバンド「WDR Bigband」(マイケル・アベネ指揮)がサポートに入っている。音的には、分厚く重厚なソウル・フュージョンな演奏になっていて、とにかく聴き応えがある。
もともと「スタッフ」も「ガッド・ギャング」も、バンドの音志向としては、ファンク、ソウル、R&Bの音要素を融合された「ソウル・フュージョンなサウンド」を個性としているのだが、今回、アレンジ良好な「WDR Bigband」のバッキングが、「ソウル・フュージョンなサウンド」の音の厚み、音のグルーヴ感、音のパンチ力に、とても有効に作用している。
ゲストのギターは、コーネル・デュプリーの様なファンクネス滴るソウルフルなエレギという訳にはいかないが、ブルーノ・ミュラーはシャープで軽めのファンクネスを纏ったギターで健闘。
ゲストのキーボードは、Hammond B3オルガン使いであるボビー・スパークスⅡ世、ジモン・オスレンダー、前者はローズ、後者はピアノも弾きこなす。両者共に、リチャード・ティーのこってこてファンキーでソウルフル濃厚なグルーヴ感溢れるキーボードという訳にはいかないが、スピード感溢れるグルーヴを醸し出すという点で健闘している。
ガッド・ギャングのメンバーの3人については、その演奏内容については、申し分無い。キューバのバリサクは、ソウルフルでグルーヴ感抜群なのは相変わらずだし、ガッドのドラム、ゴメスのベースによる「リズム隊」は、切れ味良くスインギーなリズム&ビートを叩きだし、極上のソウルフルなグルーヴを醸し出すは従来通り。まだまだ現役バリバリである。
良好な内容のソウル・フュージョンなアルバム。スタッフやガッド・ギャングの、ファンク、ソウル、R&Bの音要素を融合されたソウル・フュージョンなサウンドを踏襲して、「ガッド・ギャング再び」なサウンドを再演していて、聴いていてとても楽しい。
バックのWDR Bigband、ゲスト・ミュージシャン含めて、演奏のレベルは高く、演奏の雰囲気はスピード感良好でグルーヴィー。なかなか練られたアレンジが、この盤の演奏内容を、さらに一段、高めていて立派。現代フュージョン・ジャズの好盤だと思います。
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