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2023年5月28日 (日曜日)

ブルーノートの「抱きしめたい」

ブルーノートの4200番台は、1965年から1969年までのリリース。1964年2月にビートルズが米国に上陸したのを切っ掛けに、ロックやR&Bが聴衆の心を掴み、聴き手の「ジャズ離れ」が始まりだした時代のリリース。公民権運動が盛り上がり、ベトナム戦争が泥沼化し、政治色に染まったジャズが出現し、フリー・ジャズがもてはやされた時代。

そんな時代の中、ジャズ人気の維持〜復権を目指して、売れに売れているビートルズの楽曲のカヴァーに走ったり、1960年代前半、一世を風靡した、聴き心地満点のボサノバ・ジャズを更に推し進めたり、とにかく聴き心地優先の「イージーリスニング・ジャズ」の登場もあり、それらの動きが、後のクロスオーバー&フュージョン・ジャズに繋がっていく。

Grant Green 『I Want To Hold Your Hand』(写真左)。1965年3月31日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Hank Mobley (ts), Larry Young (org), Elvin Jones (ds)。ファンクネス満タンのパッキパキのシングルトーン・ギター、グラント・グリーンがリーダーのオルガン・カルテット。

タイトル曲からして象徴的。これ、ビートルズの「抱きしめたい」である。ブルーノートが、グラント・グリーンがビートルズのヒット曲のカヴァーに手を染めている。収録曲も見ていくと、ボサノバの大ヒット曲「Corcovado」のカヴァーもある。グラント・グリーンがボサノバ・ジャズをやるのである。当時の時代背景からのジャズに対する負のプレッシャーは相当なものだったと痛感する。
 

Grant-green-i-want-to-hold-your-hand

 
しかし、パーソネルを見ると、ブルーノート親派の一流ジャズマンが集結して対応している。その演奏内容については、悪かろう筈が無い。しかも、プロデューサーは、ブルーノートの総帥、伝説のアルフレッド・ライオン。ビートルズのカヴァー、ボサノバのヒット曲のカヴァー、いずれも演奏内容は良い。

まず、グリーン、ヤング、エルヴィンのオルガン・トリオが好調。8ビートを取っても、ビートルズ独特のフレーズを取っても、演奏の根っこはしっかり「ジャズ」している。決して、安易なイージーリスニングにはならない。この「抱きしめたい」のカヴァーはしっかりジャズしている。そして、ボサノバ・ジャズの「コルゴバード」は、以前の同演奏に比べて、更に洗練されている。

ビートルズ曲、ボサノバ曲以外のジャズ・スタンダード曲も、聴くに心地良い、流麗な曲を選んでいて、これまた、素晴らしいアレンジを施して、とても洗練されたオルガン・ジャズに仕上げている。特に、グリーンのギターの特質のひとつ「ブルージーでソウルフル」な面をソフィストケイトした前面に押し出したアレンジがバッチリ填まっている。

さすがはブルーノート・レーベル、さすがはアルフレッド・ライオンと言わざるを得ない。流麗な有名スタンダード曲の中に、ビートルズ曲のカヴァー、ボサノバ曲のカヴァーが違和感無く入っている。アレンジも優秀、演奏も優秀。なにより、しっかり「ジャズしている」ところが素晴らしい。
 
 

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