1970年代スタイルのジャマル
逝去したから、という訳では無いのだが、アーマッド・ジャマルのリーダー作の落ち穂拾いをしている。ジャマルについては、意外とこのブログで取りあげることが多いジャズマンの1人。
それには理由があって、ジャマルは「経年変化」が著しいピアニストで、活躍した年代によって異なる顔を持つ、つまり、年代によって、ピアノ演奏のスタイルが変わるピアニストなので、デビューした1950年代から逝去前の2010年代まで、それぞれの年代を横断してリーダー作を聴かないと、ジャマルのピアニストとしての個性が把握できないのだ。
Ahmad Jamal『Outertimeinnerspace』(写真)。1971年6月17日、モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴ録音。Impulse! レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (ac-p, el-p, fender rhodes), Jamil Sulieman (b), Frank Gant (ds)。ジャマルお得意のトリオ編成でのパフォーマンス。
1960年代終わり以前のジャマルのスタイルは「しっとりシンプルでクールなサウンド」だった。そして、1969年〜1970年辺りで、いきなり「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」に変貌する。
このモントルー・ジャズフェスでのライヴ・パフォーマンスは「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」。いわゆる「1970年代スタイル」のジャマルである。ライヴということもあるのだろう、長尺の演奏ばかり2曲のみ。エレギが入っていない分、その印象はほどほどなんだが、ジャズに軸足を置きつつ、演奏全体の雰囲気はクロスオーバー・ジャズ志向。
このライヴでは、ジャマルはエレピやローズも弾いていて、これがグルーヴ感濃厚なジャズ・ファンク風になっているから堪らない。1950年代のハードバップ志向のラウンジ風な演奏スタイルも、1960年代のダイナミックでファンキーな演奏スタイルも微塵も無い。ビートの効いた、アーシーで豪快なメリハリ・サウンドだけが、この盤に詰まっている。
ビートは効いているが、ジャズ・ファンクなメリハリの強い演奏になっておらず、サイケデリック&スピリチュアルな雰囲気が漂う、どこか疾走感と浮遊感が入り交じった展開になっているのは、モーダルな演奏をメインとしているからだろう。冒頭の約17分の長尺演奏の「Bogota」は、力業的なモーダルな展開がなかなか格好良い演奏になっている。
ジャケットもどこか、サイケデリック&スピリチュアルなポップ・アートで飾られており、ジャズ盤のジャケットとは思えない風情。それでも、このライヴ盤でのジャマル・トリオ、当時のジャズの最先端の演奏トレンドをしっかりと捉えつつ、オリジナリティー溢れる演奏に仕上げているのはさすがである。意外と癖になる内容です。
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