2曲目以降のトリオ演奏が良い
ウィントン・ケリーのディスコグラフィーを確認していて、あれっ、と思った。ケリーのリーダー作と言えば、リヴァーサイドとヴィージェイの2つのレーベルからのリリースと思い込んでいたら、なんと、あの大手のヴァーヴ・レコードからのリリースもあったんですね。
ヴァーヴからのリーダー作は『Comin' in the Back Door』『It's All Right!』『Undiluted』『Smokin' at the Half Note』の4枚なのだが、そう言えば『Comin' in the Back Door』は聴いたことが無い。近々に聴きたいなあ。後は今までに聴いたことはあるんですが、ヴァーヴからのリリースとは印象が薄かったですね。
Wynton Kelly『Undiluted』(写真左)。1965年2月5日の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds), Rudy Stevenson (fl, track 1 only), Unknown musician (perc, track 1 only)。1曲目の「Bobo」だけフルートを入れたカルテット、後は全てピアノ・トリオでの演奏になる。
1曲目の「Bobo」はカリプソ調の演奏で、フルートとパーカッションがカリプソ色を濃厚にしている。そう言えば、ケリーはジャマイカの血を引く家系の生まれ。そういう面で、カリプソには愛着があったのかな。ただ、この曲は如何にも「売らんが為」のポップで軽音楽的な演奏で、この曲だけ聴くと、後の曲は聴く気が起こらないほど。しかし、この盤の本質は2曲目以降にある。
2曲目の「Swingin Till the Girls Come Home」以降、素敵なピアノ・トリオのパフォーマンスを愛でることが出来る。ケリーのピアノの個性である「健康優良児的にコロコロと明るく転がるように、独特の「揺らぎ」が翳りとなってスイングする」が、この盤のトリオ演奏で良く判る。
大手のヴァーヴ・レコードからのリリース故、やや商業主義に走った、ポップで軽音楽的なアレンジが、かえって良かったのだろう。ケリーはコロコロと明るく転がるようにピアノを弾くのだが、どこか「翳り」が見え隠れして、それが哀愁感となって我々の耳に響く。そんなケリーのピアノの翳り、哀愁感が、ポップで軽音楽的なアレンジが故に、明確に浮き出てくるようなのだ。
ただ、この翳りや哀愁感は、一般万民向けの大衆音楽としては地味な印象になって損をする。恐らく、このケリーのリーダー作は、セールス的にはあまり良くなかったのでは無いだろうか。でも、ケリーのピアノの個性については、この盤ではしっかりと前面に出ていて、ケリーのピアノの個性を愛でるには好適なリーダー作ではある。
ジャケもやっつけ感満載で、ヴァーヴ・レコードとしては、あまり多くは期待して無かったのかなあ。それでも、このリーダー作の2曲目以降の、ケリーのピアノ・トリオ演奏は実に味わい深い。ベースのポルチェンもドラムのコブも好演。ウィントン・ケリーのファンには聴き逃せない好盤だと思います。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて
★ まだまだロックキッズ 【New】 2022.12.06 更新。
・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。
★ 松和の「青春のかけら達」
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から12年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« ケリーの「落ち穂拾い」盤 | トップページ | ラヴァとピエラヌンツィのデュオ »
コメント