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2023年4月 1日 (土曜日)

2曲目以降のトリオ演奏が良い

ウィントン・ケリーのディスコグラフィーを確認していて、あれっ、と思った。ケリーのリーダー作と言えば、リヴァーサイドとヴィージェイの2つのレーベルからのリリースと思い込んでいたら、なんと、あの大手のヴァーヴ・レコードからのリリースもあったんですね。

ヴァーヴからのリーダー作は『Comin' in the Back Door』『It's All Right!』『Undiluted』『Smokin' at the Half Note』の4枚なのだが、そう言えば『Comin' in the Back Door』は聴いたことが無い。近々に聴きたいなあ。後は今までに聴いたことはあるんですが、ヴァーヴからのリリースとは印象が薄かったですね。

Wynton Kelly『Undiluted』(写真左)。1965年2月5日の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds), Rudy Stevenson (fl, track 1 only), Unknown musician (perc, track 1 only)。1曲目の「Bobo」だけフルートを入れたカルテット、後は全てピアノ・トリオでの演奏になる。

1曲目の「Bobo」はカリプソ調の演奏で、フルートとパーカッションがカリプソ色を濃厚にしている。そう言えば、ケリーはジャマイカの血を引く家系の生まれ。そういう面で、カリプソには愛着があったのかな。ただ、この曲は如何にも「売らんが為」のポップで軽音楽的な演奏で、この曲だけ聴くと、後の曲は聴く気が起こらないほど。しかし、この盤の本質は2曲目以降にある。
 

Wynton-kellyundiluted

 
2曲目の「Swingin Till the Girls Come Home」以降、素敵なピアノ・トリオのパフォーマンスを愛でることが出来る。ケリーのピアノの個性である「健康優良児的にコロコロと明るく転がるように、独特の「揺らぎ」が翳りとなってスイングする」が、この盤のトリオ演奏で良く判る。

大手のヴァーヴ・レコードからのリリース故、やや商業主義に走った、ポップで軽音楽的なアレンジが、かえって良かったのだろう。ケリーはコロコロと明るく転がるようにピアノを弾くのだが、どこか「翳り」が見え隠れして、それが哀愁感となって我々の耳に響く。そんなケリーのピアノの翳り、哀愁感が、ポップで軽音楽的なアレンジが故に、明確に浮き出てくるようなのだ。

ただ、この翳りや哀愁感は、一般万民向けの大衆音楽としては地味な印象になって損をする。恐らく、このケリーのリーダー作は、セールス的にはあまり良くなかったのでは無いだろうか。でも、ケリーのピアノの個性については、この盤ではしっかりと前面に出ていて、ケリーのピアノの個性を愛でるには好適なリーダー作ではある。

ジャケもやっつけ感満載で、ヴァーヴ・レコードとしては、あまり多くは期待して無かったのかなあ。それでも、このリーダー作の2曲目以降の、ケリーのピアノ・トリオ演奏は実に味わい深い。ベースのポルチェンもドラムのコブも好演。ウィントン・ケリーのファンには聴き逃せない好盤だと思います。
 
 

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