エルヴィンの未発表音源です
ここ2〜3年、ジャズの未発表音源について、対象となるジャズマンのバリエーションが広がって来た様に感じる。以前は、決まって「ビル・エヴァンス」か「ジョン・コルトレーン」。この2人のジャズ・ジャイアントの未発表音源は「絶対に売れる」らしい。よって、この2人の未発表音源ばかりが出回っていた様な気がする。
しかし、最近は、なかなか興味深いジャズマンについての未発表音源のリリースが出てきていて、どの未発表音源も内容が実に濃い。最近の未発表音源で興味深かったのは「エルヴィン・ジョーンズ」「デイブ・ブルーベック」「ローランド・カーク」「チック・コリア」。この5人の未発表音源は良かったなあ。
Elvin Jones『Revival / Live at Pookie's Pub』(写真左)。1967年12月、NYの「Pookie's Pub」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Joe Farrell (ts), Wilbur Little (b), Billy Greene (p)。伝説のドラマー、エルヴィン・ジョーンズがリーダーのカルテット編成。コルトレーン死去からわずか2週間後の公演である。
当時、新進気鋭のジョー・ファレルのテナーがフロント1管、曲者ベーシスト、ウィルバー・リトルと、Elvin Jones & Richard Davis『Heavy Sounds』(1967年録音)で共演したピアニスト、ビリー・グリーンとリーダーのエルヴィン・ジョーンズのリズム隊のカルテット編成。
たった4人のライヴ演奏なんだが、音がとても厚くて迫力がある。これは、エルヴィン・ジョーンズの重戦車の様な、重くてポリリズミックでスピード感溢れるドラミングの賜物である。
ライヴ演奏の基本は「モード・ジャズ」。ハードバップの延長線上にある「限りなく自由度の高い」従来の伝統的なモダン・ジャズ演奏の範疇にしっかりと軸足を残したモーダルな演奏。先頭を切って、フロントのジョー・ファレルのテナーが疾走する。このファレルのモーダルなテナーが個性的かつ印象的。1970年代以降の活躍も納得である。
そんなモーダルなテナーをエルヴィンのドラミングが、がっちりとサポートし、頼もしく鼓舞する。そして、リトルのベースとグリーンのピアノが追従する。そう、このリズム・セクションのパフォーマンスが見事なのだ。コルトレーンが、まだ「限りなく自由度の高い」従来の伝統的なモダン・ジャズ演奏の範疇にしっかりと軸足を残したモーダルな演奏をやっていた頃のリズム&ビートを進化させた、エルヴィンならではのリズム&ビート。
エルヴィンがリーダーのライヴ盤なので、エルヴィンのドラム・ソロがふんだんに入っている。大体はライヴ盤でのドラム・ソロって冗長感抜群で、聴いている途中で飽きが来たりするのが常なのだが、エルヴィンのドラム・ソロは飽きない。
コルトレーン死去からわずか2週間後の公演だが、エルヴィン以下、カルテットのメンバーは皆、溌剌とエネルギッシュに演奏している。当時、死去前のコルトレーンは、フリー&スピリチュアルに思いっ切り傾倒していたので、このライヴのカルテットのメンバーとは既に距離があったのかもしれない。
1960年代後半のモード・ジャズのホットなライヴ音源が「今」になって体感できた。やはり、当時の「限りなく自由度の高い」従来の伝統的なモダン・ジャズ演奏の範疇にしっかりと軸足を残したモーダルな演奏はレベルが高かったんやなあ、と改めて再認識した次第。ほんと、良い未発表ライヴ音源でした。
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コメント
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ほんと、良い演奏ですね。当時には珍しくドラムの音がちゃんと入ってます。
それもそのはずで、録音はエルビン本人の手配でされたようですね。だから、ちゃんと自分の音が主役で入っている。いわゆる原盤の権利もエルビンなんでしょうね。推察ですが、奥さんのケイコさんが22年に亡くなって、まぁ発掘的に世に出てきた音源と思います。他にはないのかなぁ、、、。エルビンをリスペクトする現代の若手ミュージシャンも多いので、他にあると嬉しいんですけどね。最近のドラムは洗練されてそれはいいんですけど、エルビンのような土臭くてワイルドなプレイはなかなか無いので寂しいです。日本では、芳垣さんや珠也さんにその片鱗がみられますけど、なかなか聴衆の求めるものではないのかもしれません。
投稿: taka | 2024年9月 6日 (金曜日) 10時32分