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2023年4月 8日 (土曜日)

味のあるスコットのオルガン

ブルーノート・レーベルは、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンの卓越した本質を見抜く感性のもと、当時からオルガン・ジャズに長けていた。オルガンの醸し出すファンクネスとグルーヴが聴き手にしっかりと訴求する、ということを見抜き、1950年代、1500番台のジミー・スミスの重用から、オルガン・ジャズをしっかりと録音してきた。

Stanley Turrentine『Never Let Me Go』(写真左)。1963年1月28日と2月13日の録音。ブルーノートの4129番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Shirley Scott (org), Major Holley (b, tracks 1-5 & 7), Sam Jones (b, tracks 6 & 8), Al Harewood (ds, tracks 1-5 & 7), Clarence Johnston (ds, tracks 6 & 8), Ray Baretto (congas)。

スタンリー・タレンタインの単独名義のリーダー作だが、当時、夫婦だったスタンリー・タレンタインとシャーリー・スコットの共演盤になる。2つのセッションからの選曲で、ベースとドラムが、それぞれのセッションで異なるジャズマンが担当しているが、音の大勢に影響は無い。逆に、レイ・バレットのコンガの参加が、タレンタインとスコットの持つファンクネスを増幅していて、実に効果的。

音の傾向としては、タレンタインお得意の「どっぷりソウルフルで骨太なファンキー・ジャズ」では無く、スコットの「明るくポップで軽快なファンキー・ジャズ」な雰囲気が強い。夫婦の共演だが、どちらかと言えば、細君のシャーリー・スコットのオルガンの個性を活かす方向のアレンジで、この盤はまとめられている。夫君のタレンタインが細君のスコットの音の個性に寄り添う恰好になっている。
 

Stanley-turrentinenever-let-me-go

 
つまり、この盤では、明るくポップで軽快なタレンタインのテナー・サックスが聴ける訳で、太くて低音をブライアントに響かせるソウルフルなテナーが、明るくポップで軽快なオルガンの醸し出すリズム&ビートに乗って唄うのだ。意外とキュートでライトなテナーを吹くタレンタイン。やはり一流のテナーマン、演奏テクニックの引き出しの多さに感心する。

シャーリー・スコットのオルガンは、フット・ペダルでベースラインを代替することはしないので、この盤のセッションではベーシストが必ず入っている。やはり、低音のリズム&ビートを司る専門のベースが入っている分、演奏全体のベースラインが多彩で、なかなか内容の濃い、テクニックの高いファンキー・ジャズに仕上がっている。「明るくポップで軽快なファンキー・ジャズ」だが、しっかりと音と対峙する鑑賞に耐える内容なのには感心する。

軽快に飛ばすスタンダード曲の「Without A Song」、歌心溢れるタレンタインのテナーとグルーブ感溢れるスコットのオルガンが出色の出来の、ミュージカル「ジプシー」の挿入曲の「You'll Never Get Away From Me」、スコット作のタイトル曲も良い出来。収録された全ての曲が明るくポップで軽快なファンキー・ジャズ」としてまとめられていて、アルバム全体の統一感も良好。

スタンリー・タレンタインの単独名義のリーダー作だが、シャーリー・スコットのオルガンの個性、「明るくポップで軽快なファンキー」な個性がしっかり記録された好盤。当時、夫君だったタレンタインも、そんなスコットの個性を引き立たせる側に回っていて好演。なかなか味わい深い「オルガン・ジャズ」盤です。
 
 

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