MALTA『High Pressure』再び
ここ4〜5年の間、日本人によるフュージョン・ジャズ、いわゆる「和フュージョン」の名盤、好盤がリイシューされている。
それまでは、和フュージョン盤のリイシューについては、過去に圧倒的に人気があった盤のみがリイシューされていて、売れなかったが内容的に優れている盤とか、マニアックな人気を獲得していた盤などは、レコード会社の方で「再発しても採算が取れない」と判断したんだろう、今まで、廃盤のままでリイシューされることは無かった。
が、何故かはよく判らないが、そういった「不採算」な和フュージョン盤がリイシューされる様になった。僕は、フュージョン・ブームについては、学生時代、リアルタイムで体験しているので、そんな「不採算」な和フュージョン盤は、ジャケを見るだけで音が聴こえてくるくらい、当時、聴き込んだ懐かしい盤ばかりである。
MALTA『High Pressure』(写真左)。1987年の作品。ちなみにパーソネルは、MALTA (sax), Don Grusin (key), Dann Haff (el-g, ac-g), Nathan East (el-b), Vinni Colaiuta (ds), Paulinho Da Costa (perc)。日本のフュージョン系のサックス奏者、マルタの5枚目のリーダー作。
マルタは1949年生まれ。鳥取県出身。本名「丸田 良昭」。今年で74歳。1973、東京芸大を卒業後、バークリー音楽大学に留学。1978年、ミンガスの『Me, Myself An Eye』『Something Like A Bird』の録音に参加。1979年より、ライオネル・ハンプトン楽団のコンサート・マスターを務め、1983年にJVCと契約し、初リーダー作『MALTA』をリリース。フュージョンをメインに活動。演奏以外にも、芸大にて教鞭を執る傍ら、音楽発展に尽力、とある。
MALTAって、ミンガスのアルバムに参加しているんですよね。聴いたことがありますが、硬派でメインストリームな活きの良いサックスでした。MALTAのサックスって、素姓の良い、基本がしっかりしたサックスで、とっても良い音で鳴り、テクニックも優秀。もっと注目されても良いサックス奏者だと思います。
さて、『High Pressure』は、1987年、我が国でのバブル期にリリースされ、これは「売れた」。路線としては、ディヴィッド・サンボーンあたりだと思うが、サンボーンよりも、サックスの音が柔軟で素直で流麗。ブリリアントで癖が無くテクニックは優秀。そんなMALTAのサックスをとことん聴いて楽しむ事が出来る好盤である。
今回、改めて聴いてみて(20年ぶりくらいでした)、MALTAのサックスがとても良い音で鳴っているのは勿論のこと、バックの演奏が結構エグい。キーボードからギターからベースからドラムまで、相当、凄い演奏を繰り広げているに気がついて、思わず、スピーカーの前でしっかり聴き込む。
キーボードのフレーズはセンス良く、ギターはスピード感溢れ切れ味良く、だが、エレベが相当エグい。誰だろう、とパーソネルを確認したら、若き日のネイザン・イーストでした。納得。そして、ドラムがそれ以上にエグい。ポリリズミックな高速ドラミングで、8ビートでスイングするような疾走感。こんなエグいメンバーをバックに、MALTAは悠然とサックスを吹き上げ、疾走する。
和フュージョンの名盤として、聴き応え満点の『High Pressure』。バブル期のお洒落なフュージョンとは一線を画した、ワールドワイドで勝負出来る、フュージョン・ジャズの名盤だと思います。もう一回、聴き直したくなった。
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