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2023年4月23日 (日曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・24

ジャズ盤の中には、そのジャズマンの演奏志向とは外れたアルバムが存在することがある。恐らく、そのジャズマンの演奏志向を貫くと、当時のレコード盤のセールスに悪影響を及ぼす可能性が高いと予想される時、プロデュースという観点から、その演奏志向の修正を余儀なくされることが多い、と推察している。

John Coltrane『Ballads』(写真左)。1961年12月21日、1962年9月18日、11月13日の録音。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ts), McCoy Tyner (p), Jimmy Garrison (b, #1-6, 8), Reggie Workman (b, #7 only), Elvin Jones (ds)。演奏のメンバー編成の基本は、コルトレーンの伝説のカルテット。1曲だけ、ベースがレジー・ワークマンに代わっている。

この盤は「当時、フリー・ジャズに走り始め、アルバムの売れ行きに不安を感じたレコード会社が、アルバムを売る為にたてた企画盤」と言われる。確かにそう感じるは、コルトレーンはアトランティック時代(1960〜61年)で、高速シーツ・オブ・サウンドからフリージャズへの傾倒が感じられる盤を制作し、その演奏志向の大きな変化の中で、インパルス・レコードに移籍した。
 
インパルス・レコードでは、初っぱなは『Africa/Brass』で、ジャズ・オーケストラなサウンドに挑戦したが、オーケストレーションの主役は、ドルフィーとタイナー。2枚目の『Coltrane』では、嵐のような「モード+フリー」な展開となって、インパルスとしては、これではなあ、と感じたのでは無いか。
 

Jc_ballads_2

 
2枚目の『Coltrane』の後、『Duke Ellington & John Coltrane』とこの『Ballads』という話題性溢れる、「売れる」が狙いの企画盤のリリースが続く。その後、当時のコルトレーンの演奏志向をホットに捉えた『Impressions』が出るが、ほどなく『Ballads』の第2弾の様な、やはり「売れる」が狙いの企画盤『John Coltrane and Johnny Hartman』がリリースされている。

確かにこの盤『Ballads』のコルトレーンは、当時のコルトレーンの演奏志向らしくない内容で統一されている。高速シーツ・オブ・サウンドを極力封印し、フリーへの展開は皆無。演奏はタイトル通りバラード曲ばかりで、モーダルな展開もバラードなゆっくりしたリズム&ビートに乗っているので刺激が無い。つまり、とても聴き易い、聴いていて心地の良いジャズ演奏に仕上がっている。

この盤の感想については、当ブログの過去記事(2009年3月9日の記事・左をクリック)をご一読されたい。この盤は、明らかにコルトレーンの演奏志向とは全く異なる内容の「異質のアルバム」と言える。

しかし、コルトレーンは超一流のテナー・マン。バラード演奏だけでまとめてくれ、と言われれば、これだけのハイテクニックを駆使して、最高のバラード演奏集を「ものにして」しまうのだ。そういう意味では、この盤『Ballads』は、コルトレーンの、テナーマンとしての「途方も無い優秀性」の証しでもあるのだ。
 
 

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