ステファノ・バターリアを知る
春の陽気には、ECMレーベルの音が良く似合う。欧州ジャズ独特の黄昏時の様な、クールな「寂寞感」。ECMの音にはその欧州ジャズ独特の「寂寞感」が、独特のエコーを纏って、しっかりと「ある」。特にマイナー調なフレーズでは、その「寂寞感」は増幅される。その増幅された「寂寞感」は、静的なスピリチュアル・ジャズとして、ECMの音に反映される。
Stefano Battaglia Trio『In The Morning - Music of Alec Wilder』(写真左)。2014年4月, 伊トリノでの録音。ECMの2429番。ちなみにパーソネルは、Stefano Battaglia (p), Salvatore Maiore (b), Roberto Dani (ds)。イタリア出身のピアニスト、ステファノ・バターリアがリーダーのピアノ・トリオ編成。
ステファノ・バターリアはイタリアのジャズ・ピアニスト。1965年、イタリアのミラノの生まれ。今年で58歳になるベテランの域に入った、実績のあるジャズ・ピアニストである。初リーダー作は1987年。2003年からECMレーベルをメインに活動している。
ベースのサルヴァトーレ・マイオーレは、イタリアのサルデーニャ州出身、1965年生まれ。ドラムのロベルト・ダニは、イタリアのヴィチェンツァ出身、1969年生まれ。
このステファノ・バターリアのトリオは全員イタリア出身。純イタリアのピアノ・トリオである。純イタリアのピアノ・トリオが、イタリアのジャズ・レーベルでは無く、ECMレーベルに録音を残す。ジャズのボーダーレス化をここでも感じる。
この盤のタイトルには副題で「Music of Alec Wilder」とある。そう、この盤は米国の作曲家アレック・ワイルダー(Alec Wilder、1907-1980)のトリビュート盤である。このワイルダーは、米国のポップス曲、クラシックの室内楽やオペラ等の作曲家とのこと。実は僕は知らなかった。それでも、聴いてみると印象的なフレーズがてんこ盛りで、パターリアがアルバムの企画対象として採用した訳が良く判る。
イタリア・ジャズのピアノは、結構、ジャズとして伝統的な音作りがメインで、欧州ジャズの中でも、耽美的ではあるが、意外と骨太で粘りがある。が、バターリアのピアノはその傾向が無い。透明度が高く、スッキリとした音で耽美的、かつリリカル。どこか、キース・ジャレットを想起するが、キースほど難解では無い。スッキリ判り易い、耽美的で透明度の高いモーダルなフレーズが、パターリアのピアノの個性である。
そんなパターリアのピアノが「ECMレーベルの音の個性」にジャストフィットしているのが、とても良く判る。耽美的で透明度の高い、静的スピリチュアルなピアノ。テクニックは抜群で、様々な即興演奏のパターンを披露し、ニュー・ジャズ志向のモーダルな演奏を展開する。ゆったりとしたビートに乗って、音が漂う、印象的な「浮遊感」。そして、魅力的な「音の間」。バリエーション豊かな、静的スピリチュアルな即興演奏。
マイオーレのベース、ダニのドラムも、パターリアのピアノの音の個性にしっかり追従し、パターリアのピアノを引き立て、音の個性を増幅する。この硬軟自在、緩急自在、変幻自在のリズム隊、その能力はかなり高い。
ECMレーベルでのピアノ・トリオ盤と言えば、キースの「スタンダーズ・トリオ」が直ぐに浮かんで、その後が続かないのだが、このパターリア・トリオの音は、キースの「スタンダーズ・トリオ」に匹敵する、内容の濃い音だと思う。静的スピリチュアルでモーダルな音が実に芳しい。
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