ウエストコースト・ジャズのタル
ジャズ・ギターのスタイリストの1人、タル・ファーロウを聴いている。超絶技巧な高速弾き回し、巨大な手を一杯に広げて縦横無尽にフレーズを紡ぎ出す様を形容した「オクトパス・ハンド」によるダイナミックなフレーズの拡がり。ピッキングも力強く、音は硬質。しかし、出てくる音は歌心満点。とても聴き応えのある純ジャズ志向のギターである。
『A Recital By Tal Farlow』(写真左)。1955年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Perkins (ts), Bob Gordon (bs), Bob Enevoldsen (tb), Tal Farlow (g), Monty Budwig (b), Lawrence Marable (ds)。ピアノレス。ウエストコースト・ジャズにおける、3人の実力派ホーン奏者と共演したタルのリーダー作。
ウエスト・コーストでのセッションになるので、当時の「お洒落なアレンジで聴かせるジャズ」が、この盤に詰まっている。まず、中低音域のテナー・サックス、バリトン・サックス、ヴァルブ・トロンボーンが織り成す豊かなユニゾン&ハーモニーが良い。そのお洒落で聴き応えのあるホーン・アレンジをバックに、切れ味の良いシングル・トーンのタルのギターが浮き出てくる。
テナー、バリトン、ボーンの低音中心の三管編成というところが、この盤のアレンジの「キモ」。ウエストコースト・ジャズの良いところが満載。実に雰囲気ある、聴き応えの良い演奏に仕上がっている。ウエストコースト・ジャズのバック演奏は流麗そのものなのだが、この流麗なバックの下、タルが訥々としたシングルトーンの、バキバキで骨太なギターで、超絶技巧に弾きまくる。
ルンバ調が楽しい「アウト・オブ・ジ・ノーホエア」、ブルージーでバップな名曲「ウォーキン」、溌剌と躍動感溢れる「ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン」など、どの曲のアレンジは良好、タルのギターは絶好調である。タルがバッキングに回った時のコード・プレイも見事。
ジャケット・デザインも良好。ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌のアルバム紹介記事にはまず、この盤のタイトルが上がったのを見たことがない。タルのリーダー作紹介ですら、この盤のタイトルが上がるのを見たことが無いのだが、この盤、ウエストコースト・ジャズにおけるタルのリーダー作として、とても良い出来だと思います。好盤。
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