アコピだけのボブ・ジェームス盤
ボブ・ジェームスは僕の大のお気に入りのミュージシャンの1人。本格的にジャズを聴き始める前から、1970年代前半の頃、FMのクロスオーバー・ジャズ特集で耳にして以来、ずっと、リアルタイムにボブ・ジェームスを聴き続けてきた。振り返れば、初リーダー作の『One』から、ずっとリーダー作を欠かさず聴いてきたことになるのか。
Bob James『Grand Piano Canyon』(写真左)。1990年の作品。ボブ・ジェームスの22枚目のリーダー作。ちなみにパーソネルは、Bob James (ac-p, horn-arr) はリーダーとして全曲参加だが、演奏曲毎にメンバーを選定している。パーソネルを見渡すと、後のフュージョンのスーパー・バンド「Fourplay」の初代メンバーが集結している。
ボブ・ジェームスはキーボーディストとしての腕前は超一流。フェンダー・ローズ、シンセサイザーといったエレクトリック・キーボードの演奏は素晴らしい。特に、フェンダー・ローズの腕前はトップクラス。さすが、フュージョンの大御所と呼ばれる所以である。
しかし、ボブ・ジェームスはアコースティック・ピアノの腕前も素晴らしいものがある。もともとは、ポスト・バップ〜フリー志向のジャズ・ピアニストから、彼のキャリアはスタートしているので、当たり前と言えば当たり前なんだが。メインストリームな純ジャズでは、なかなか出せなかったボブ・ジェームスの個性が、フュージョン・ジャズの中で花開いたと言って良いだろう。
特に「ピアノを唄わせる」様な弾きっぷりが個性。テクニックに走るのでは無く、ゆったりとしたテンポの中で、右手のシングルトーンで「フレーズを唄わせる」様にピアノを弾く。
タッチは硬質で明確、従来のジャズ・ピアノとは、音の重ね方が違っていて、メジャーにポップに響く。いわゆる「フュージョンのエレピ」の奏法をアコースティックに置き換えた様なピアノなのだ。
そんな「ボブ・ジェームスのアコースティック・ピアノ」を心ゆくまで愛でることが出来るアルバムがこの『Grand Piano Canyon』。このアルバムでは、ボブ・ジェームスはアコースティック・ピアノしか弾いていない。それほど、アコースティック・ピアノに拘って、フュージョン・ジャズ志向の演奏を展開している。
ボブ・ジェームス節満載のフュージョン色の色濃いサウンドから、後のフュージョンのスーパー・バンド「Fourplay」に繋がるスムース・ジャズ志向のサウンド、アコースティック・ピアノの深くて豊かな音が前面に押し出されてくる様な好アレンジまで、演奏のアレンジ、内容については、徹頭徹尾「ボブ・ジェームス」の音世界。
ボブ・ジェームスのアレンジャー&プロデューサーの引き出しの多彩さが反映されたラエティ溢れる内容だが、どの演奏にも「ボブ・ジェームス節」が炸裂していて、アルバム全体に統一感がある。コンテンポラリーな純ジャズとしても十分に評価出来る、優れた内容のアルバムである。
カバー・アートは、David Grath による「グランド ピアノ キャニオン」と題された原画から複製されたものだとか。良い内容のアルバムには、良いカバー・アートが宿る。このボブ・ジェームスの『Grand Piano Canyon』、1990年代のフュージョン&スムース・ジャズの傑作の1枚だろう。
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