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2023年4月20日 (木曜日)

R&B系ミュージシャンとの邂逅

1960年前半のジャズは「多様化の時代」。ハードバップが成熟し、そのハードバップをベースとして、様々な演奏トレンドが出現し、発展していった。アーティスティック志向として「モード、フリー」、大衆音楽志向として「ファンキー、ソウル」。両極端な志向のジャズが「多様化の時代」として、入り乱れていた。

特に、大衆音楽志向のジャズとして「ファンキー、ソウル」では、R&B系ミュージックとの融合が始まる。ジャズお得意の「他ジャンル音楽の要素の取り込みと融合」である。奏でるミュージシャンも、ファンキー・ジャズを中心に、R&B畑からジャズ畑に参入してくる。後に振り返ると、そんなジャズマンいたっけ、と思う、この時期だけジャズ畑で録音に臨んだR&B系のミュージシャンもいた。

Harold Vick『Steppin' Out!』(写真左)。1963年5月27日の録音。ブルーノートの4138番。ちなみにパーソネルは、Harold Vick (ts), Blue Mitchell (tp), John Patton (org), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。リーダーのヴィックのテナー・サックス、ミッチェルのトランペットがフロント2管、バックがパットンのオルガン、グリーンのギター、ディクソンのドラムのオルガン・トリオのリズム・セクション。

リーダーのハロルド・ヴィックは、ジャズとR&Bを「またにかけて」活動したテナー・サックス奏者。バイオグラフィーを紐解くと、16歳の時にテナー・サックスを始め、R&Bのバンドで演奏し、1960年以降、ジャック マクダフを始めとしたジャズ・オルガニスト達や様々なジャズマンと共演し、1970年代以降は、ジャズとR&Bの両方で、セッションをこなしている。
 

Harold-vicksteppin-out

 
ブルーノートは、そんなR&B系のテナー・マンについても、何のこだわりも無く、リーダー盤の制作機会を与えている。ブルーノート・レーベルの懐の深さ、総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの慧眼と矜持を強く感じる。そして、その成果の1つがこの、Harold Vick『Steppin' Out!』である。

メンバー構成を見渡すと、リーダーのヴィック以外は、ブルーノート傘下のファンキー・ジャズ志向のジャズマンばかりで固めている。しかし、そこに、R&B系のヴィックのテナーが入ってくると、R&B色が濃厚になって、演奏全体の雰囲気は、ファンキーから一気にソウルフルに変化する。が、決して俗っぽい展開にはならない。

選曲を見渡すと、シンプルなリフも持ったブルーズ曲ばかりが並んで、これってジャズによるR&B曲のイージーリスニングにならないの、と危惧するが、そうはならない。

演奏全体の雰囲気はしっかりと「純ジャズ」している。ヴィックがリーダーとして「真面目に」ジャズに取り組み、プロデューサーのアルフレッド・ライオンが演奏全体の雰囲気をディレクションしていたことが良く判る。

こういった、ファンキー・ジャズを中心に「R&B畑からジャズ畑に参入してくるミュージシャン」をしっかり捉え、内容に優れたリーダー作を残すところは、ブルーノート・レーベル、さすがである。ブルーノートの1500番台と4000〜4300番台を押さえれば、当時のジャズの歴史とトレンドが判る、というが、それも至極納得である。
 
 
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