聴き直して「良いものは良い」
21世紀に入って、ジャズはまだまだ「深化」を続けている。20世紀、特に1950〜60年代の様に、ジャズの新しい演奏トレンド、例えば、モードやフリー、スピリチュアルなどの様な革新的な内容の演奏トレンドはもはや現れないとは思うが、これまでのジャズ演奏を彩った演奏トレンドを「深めていく」動きは衰えていない。
Bernstein, Goldings, Stewart『Perpetual Pendulum』(写真左)。2021年7月15ー16日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Larry Goldings (org), Peter Bernstein (g), Bill Stewart (ds)。ラリー・ゴールディングスのオルガン、ピーター・バーンスタインのギター、ビル・スチュワートのドラムで編成されたオルガン・ジャズ・トリオ。ジャケットを見ればすぐ判る「Smoke Sessions Records」からのリリース。改めての聴き直しである。
1980年代後半から、長年、セッションを重ねてきた3人のトリオ演奏。硬軟自在、緩急自在、変幻自在なスチュワートのドラミングが「肝」。そんな切れ味の良いドラミングに鼓舞されて、ゴールディングスがオルガンを、バーンスタインがギターを弾きまくる。魅力的なオルガンとギターのユニゾン&ハーモニー、そしてチェイス。曲毎に展開されるアドリブ合戦も聴いていて楽しいことこの上無い。
演奏曲は全11曲。メンバーそれぞれの自作曲とスタンダード曲が上手く織り込まれていて、良い感じのアルバムに仕上がっている。それぞれのオリジナル曲の演奏も良い出来だが、とりわけ、スタンダード曲の解釈と演奏が白眉で、過去の演奏のコピーや焼き直しに陥っていないのには感心する。オルガン・ギター・ドラムのトリオ演奏は過去にごまんとあるんだが、この3人のスタンダード曲の解釈は新しい。
「Come Rain or Come Shine」は、オルガンの音色とギターの音色の特質を活かしたソロの受け渡しがユニーク。エリントンの「Reflections in D」は典雅なフレーズ、ロマン溢れる雰囲気が秀逸。バーンスタインの曲「Little Green Men」は劇的に突っ走る。タイトル曲「Perpetual Pendulum」は小粋な味のある演奏。いずれも、モーダルで理知的、それでいて、スインギーでブルージーな展開には感心させられる。
以前から「ごまんとある」オルガン・ジャズ・トリオだが、このバースタイン、ゴールディングス、スチュワートのトリオは、過去の音楽成果を焼き直したり、真似したりはしていない。紡ぎ出すフレーズの響きも新しいし、スタンダード曲の解釈も3人の個性を最大限に活かしたもので、他には無い響きがある。ネオ・ハードバップと一括りされそうな演奏であるが、実は内容的には「温故知新」。この現代ジャズにおける中核の3人、全く隅に置けない。
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