ペイトンのマイルスへの捧げ物
1980年代半ば辺りから始まった「純ジャズ復古」のムーヴメント。ウィントン・マルサリスをリーダーとする「新伝承派」、ブルックリンを中心に、そのアンチテーゼなジャズを展開した「M-Base派」などが、新しいメンストリーム志向の純ジャズを展開した。そんな中、1990年代のジャズ・シーンに現れ出でたトランペッター、ニコラス・ペイトン。
ニコラス・ペイトンは、ウィントン・マルサリス、ウォレス・ルーニーらと共に、次世代のジャズを担うトランペッターとして、将来を嘱望された。21世紀に入って現時点では、ウィントンは目立った活動が聞こえてこなくなり、ルーニーは、2020年3月、コロナでの合併症で他界した。ニコラス・ペイトンも今年で50歳。ペイトンだけが、現時点で、コロナ禍にも負けず、コンスタントにリーダー作をリリースし続けている。
Nicholas Payton『The Couch Sessions』(写真左)。2022年7月12&13日、NYでの録音。Smoke Sessions Recordからのリリース。ちなみにパーソネルは、Nicholas Payton (tp, p, rhodes & clavinet), Buster Williams (b), Lenny White (ds)。リーダーのニコラス・ペイトンが、マルチ・プレイヤーとして、トラペットとキーボードを担当し、ベースにバスター・ウイリアムス、ドラムにレニー・ホワイトというレジェンド級のリズム隊を擁したトリオ編成。
アルバム全体の雰囲気は「マイルス・トリビュート」。タイトル通り、居間で寛ぎながらのセッション風の演奏が心地良い。冒頭のジェリ・アレン作の「Feed the Fire」では、ペイトンのマイルス風のトランペットは勿論のこと、ハンコック風のキーボードにも良い味を出していて、特にエレピはとても良い雰囲気。マイルスのバンドに所属していた経験のある、ウィリアムスのベース、ホワイトのドラムも、そんな「マイルス・トリビュート」な演奏にしっかりと追従している。
4曲目のウェイン・ショーター作の有名曲「Pinocchio」では、冒頭、マイルスについて語っている(と思われる)ペイトンのトークには、ウィリアムスやホワイトも合いの手や笑い声で応じている様子が録音されている。そして、続く演奏は、もろマイルスのペイトントランペット、ロン・カーター的なウィリアムスのベース、トニー・ウィリアムス的なホワイトのドラムが、このモーダルな難曲をクールに格好良く解釈し、疾走感&爽快感溢れるパフォーマンスに展開する。
確かに「マイルス・トリビュート」な演奏ばかりなんだが、マイルス・ミュージックの物真似になっていないところが良い。マイルス・ミュージックの「肝」の部分はしっかり押さえているが、演奏全体の雰囲気はペイトンのオリジナル。ところどころに、トークやサンプリング的なヴォイスやヴォーカルが入っているところを問題視する向きもあるが、僕は気にならない。それだけ、3人のパフォーマンスの部分が優れていてクールで格好良い。好盤です。
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