ケリーの「落ち穂拾い」盤
春になると「ウィントン・ケリー」が聴きたくなる。ウィントン・ケリーは、健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。
健康優良児的にスイングするところと揺らぎの翳りの対比が「春」の持つ雰囲気に似ていると思うのだ。春って、暖かくなって陽光うららか、心も浮き浮きするするのだが、僕はそんな明るさの中に、どこか無情さを感じて、どこか「寂しい、悲しい」感じがして、思わずしみじみしてしまう。そんな雰囲気を、ウィントン・ケリーのピアノを聴いていても感じるのだ。
Wynton Kelly『Someday My Prince Will Come』(写真左)。Vee-Jayレーベルでリリースしたリーダー作での未収録となったトラックの「落ち穂拾い」盤。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Lee Morgan (tp, track 7), Wayne Shorter (ts, track 7), Paul Chambers (b, tracks 1-3, 5 & 7), Sam Jones (b, tracks 4 & 6), Jimmy Cobb (ds)。
LP盤の収録曲ベースで分類すると、7曲目の「Wrinkles」のみ『Kelly Great』から(録音日・1959年8月12日)。4曲目「Come Rain or Come Shine」と6曲目の「Sassy」が『Kelly at Midnight』(録音日・1960年4月27日)から、その他、残り7曲が『Wynton Kelly!』(録音日・1961年4月20日)のセッションからの収録。
いずれの曲も、ウィントン・ケリーの名盤のセッションからの「落ち穂拾い」なので、未収録曲とは言え、捨て曲は無い。未収録曲集だと酷いものでは、途中で演奏を止めているものや、スタートでずっこけて途中で継続不能になっているものが収録されていて、聴いていて気分が悪くなるものもあるのだが、このケリーの「落ち穂拾い」盤は、いずれも演奏はしっかり完結していて破綻も無い。良い内容の演奏ばかりで、それぞれのセッションの充実度が良く判る。
感心するのは、ケリーのピアノに全く「ブレ」が無いこと。それぞれの曲にケリーの個性がしっかり記録されていて、テクニック的にも申し分無い。よって、3つのセッションからの寄せ集めなんだが、この盤の為だけのセッションからの選曲なのか、と思ってしまうほど、不思議とアルバム全体に「統一感」がある。好調な時のケリーは無敵である。「落ち穂拾い」盤ではあるが、ケリーを愛でるアルバムとして良い内容。好盤です。
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