ルーさんとオルガンとギターと
1950〜1960年代のブルーノート・レーベルには、レーベルにずっと所属した「お抱えジャズマン」がいた。アルト・サックスのルー・ドナルドソンとジャキー・マクリーン、テナー・サックスのアイク・ケベック、ピアノのホレス・シルヴァー、トランペットのドナルド・バードなど、ブルーノートをメインにリーダー作をリリースし続けた強者共である。
ブルーノート・レーベルは中小規模の零細レーベルだったので資金力は無い。営業力も弱い。よって、ストリングスを交えてのゴージャズな編成での録音や、ビッグバンドなどの大人数編成の録音が出来ない。アルバムを米国全土で売り上げる営業力も期待出来ない。
それをやりたければ、期待するならば、大手のジャズ・レーベルに移籍する必要があった。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンに見出されて、メジャーな存在になったジャズマンの中で、そういう大手レーベルに移籍していったジャズマンも多くいる。
それでも、ライオンは自らが見出したジャズマンの大手レーベルへの移籍を喜んだ。自分が見出したジャズマンが大手のレーベルに認められて、メジャーな存在になっていく。それがライオンにとっては無上の喜びだったそうだ。ライオンは「ジャズマン・ファースト」なレーベル経営者であり、プロデューサーであったことが良く判る。
しかし、逆に、そのライオンのプロデュースの手腕とジャズマンに対する真摯な対応にほだされて、ブルーノートの「お抱えジャズマン」として、ずっと残ったジャズマンも多くいるのも事実。ライオンの人柄に惚れて惹かれてブルーノートに留まり、ライオンが引退した後も、1970年代半ば、ブルーノートが活動停止するまで、ずっと「お抱えジャズマン」であり続けた。
Lou Donaldson『Good Gracious!』(写真左)。1963年1月24日の録音。ブルーノートの4125番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Grant Green (g), Big John Patton (org), Ben Dixon (ds)。ブルーノートのお抱えアルト・サックス奏者のルー・ドナルドソンがリーダー、ピアノレス、代わりにオルガンが入ってベースレス(ベースラインはオルガンが代替)、ギターを加えたカルテット編成。
もともと、ルーさんのアルト・サックスは、バップでファンキー、音は明るくフレーズは爽快。アーティスティックな面を突き詰めたジャズより、ポップで聴き心地の良いソウルフルなジャズに向くアルト・サックス。そんなルーさんのアルト・サックスは、ジョン・パットンの正統でどこかポップなファンキー・オルガンとの相性抜群。バップでご機嫌な演奏を繰り広げる。
そして、グリーンのパッキパキ硬質なシングルトーンが個性のファンキー・ギターとの相性も抜群。ルーさんのアルト・サックスは流麗で爽快。それに相対するグリーンのギターは、シングルトーンで硬質でバッキバキと真逆。そんなお互い真逆の音が、溢れるようなファンクネスという「共通項」を基に、ソウルフルでご機嫌な演奏を繰り広げる。
ディクソンのファンキーなドラミングは、そんなアルト・サックス、オルガン、ギターを、ソウルフルに鼓舞して、引き立てる。このディクソンもドラミングも、この盤の「キモ」。
あまり、ブルーノート盤の紹介に出てこないルーさんのリーダー作なんですが、内容は「間違いの無い」、バップでファンキーでソウルフルな「ご機嫌なオルガン・ジャズ」。ルーさんのアルト・サックスもその個性が十分に輝いていて、この盤、ファンキー&ソウル・ジャズの好盤だと思います。お勧め。
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