プレヴィンの晩年を愛でる。
小粋なジャズ盤、それも「ピアノ・トリオ」盤を探していると、必ず出会うピアニストがいる。アンドレ・プレヴィンなど、そんなピアニストの1人で、クラシックのピアニスト&指揮者、そして、ジャズ・ピアニストと「3足の草鞋を履く」音楽家だが、アレンジ能力にも優れ、スタンダード曲やミュージカル曲のジャズ・アレンジは、どれもが素晴らしい。
André Previn with Mundell Lowe & Ray Brown『Uptown』(写真左)。1990年8月22日の録音。ちなみにパーソネルは、André Previn (p), Mundell Lowe (g), Ray Brown (b)。アンドレ・プレヴィンがリーダー格、プレヴィンのピアノとロウのギター、ブラウンのベースという、オールド・スタイルのピアノ・トリオ。
通常、今では「ピアノ・トリオ」と言えば、ピアノ+ベース+ドラムの楽器編成が基本。これは、モダンジャズ・ピアノの開祖「バド・パウエル」が恒常的に採用した編成。それ以前は、ピアノ+ベース+ギターの楽器編成が「ピアノ・トリオ」の基本編成だった。このプレヴィンのリーダー作では、敢えてオールド・スタイルのピアノ・トリオ編成を採用して、3種の楽器に「フロント楽器」としての役割を担わせて、3人それぞれのインタープレイの妙が楽しめる内容になっている。
それにしても、プレヴィンのピアノは上手いし、とってもジャジーだ。プレヴィンと言えば、クラシックのピアニスト&指揮者、そして、ジャズ・ピアニストと「3足の草鞋を履く」アーティストだが、ジャズ・ピアニストとしての能力はかなり高い。クラシック・ピアノ出身らしく「端正で歯切れが良く破綻の無い」ピアノが個性。しかも、ファンクネスは皆無なんだが、オフビートが効果的に効いていて、流麗に弾き回すフレーズがとてもジャジー。
ギターのマンデル・ロウのギターも小粋なバッキング。プレヴィンのピアノとの相性がとても良いみたいで、音がぶつかったり重なったりすることが無い。ロウの職人芸的ギターもこの盤の聴きもの。当然ながら、レイ・ブラウンのベースは素晴らしい。ジャズ・ベースのレジェンド中のレジェンドなんだが、この盤でのブラウンのベースは演奏全体のリズム&ビートをしっかり掌握しコントロールしている。安心安定のブラウンのブンブン・ベースはこれまた聴き応え十分。
選曲も一捻りしていてユニーク。全13曲中、ハロルド・アーレンの曲が6曲、デューク・エリントン関連の曲が6曲と、2つの系統のスタンダード曲で固めていて、不思議な統一感がある。この盤を録音した時、プレヴィンは61歳。大ベテランの域に入ったプレヴィンは、若かりし頃の様に弾き過ぎること無く、余裕ある滋味溢れる流麗で躍動感のあるピアノを弾きまくっている。プレヴィンの晩年を愛でるべき好盤である。
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音楽界にとっての大損失です。
映画音楽もジャズも、クラシックも超一流のアーティストでありました、
マスターがセレクトされたアルバムは、懐かしのテラーク。確か数枚ほど他にもリーダー作品があったような記憶が致しますが
定かとは参りません。
いづれにしても、駄作というものが皆無に等しいアンドレさん。楽しませて貰いました。
僕はジャズも多少はかじる程度のリスナーなのですが、実は大のクラシック好き。
中でも指揮者は、ビエール・モントゥーが大好き。そして、彼のお弟子さんがアンドレ・プレヴィン。もう最高ですね。
お二人共、演奏の美学がバランス最重視。
優美さ、深刻さ、繊細さにおいて完膚なきまでの均整美に貫かれ、心地好いったらありません。津軽弁風に言うと『あづましい』が当てはまるのかしらん。
指揮活動の初期から、ロンドン交響楽団やロイヤルフィルなど名演の数々。そして、特にウィーンフィルとの絶美の相性、特にモーツァルトがピカイチでしたね。
また、ウィーンフィルメンバーとの室内楽共演でのピアニストとしての腕前の見事なこと。
本当に残念でなりません。
合掌。
投稿: 高橋直樹 | 2023年3月28日 (火曜日) 16時26分