« ピアノでジャズの歴史を駆け巡る | トップページ | ジャズ喫茶で流したい・260 »

2023年3月10日 (金曜日)

グループ・サウンズ重視のタル盤

タル・ファーロウを聴いている。パッキパキのシングルトーンがなのだが、ファンクネスは控えめ。バップでリリカルな疾走感のあるテクニカルなギターが身上。この辺が他の黒人系のギタリストと一線を画すところ。とにかく、シュッとしていて切れ味の良いシングルトーンでバリバリ弾きまくる。一転、バラード演奏は味のあるシングルトーンのフレーズを響かせて、印象的に唄い上げていく。

『The Interpretations Of Tal Farlow』(写真左)。1955年1月7日、ロサンゼルスでの録音。Tal Farlow (g), Claude Williamson (p), Red Mitchell (b), Stan Levey (ds)。タル・ファーロウのVerveレーベルからの第3弾。バックのピアノ・トリオは、米国ウェストコースト・ジャズの精鋭達で編成されている。演奏の基本は「ウエストコースト・ジャズ」。いわゆる「洒落たアレンジで聴かせるジャズ」である。

スタンダード曲中心の選曲。これが実に良い。これまでのタルのリーダー作3枚は、どちらかと言えば、タルの弾きまくり、タルの高速テクニック、バップなフレーズがメインだったが、このリーダー作4作目『The Interpretations Of Tal Farlow』は、それまでのリーダー作と趣きが違う。バックのリズム隊が、ウィリアムソンのピアノ、ミッチェルのベース、レヴィーのドラムと、ウエストコースト・ジャズを代表するピアノ・トリオ、という影響もあるのだろうか。
 

The-interpretations-of-tal-farlow

 
この盤でのタルは、バリバリ弾くというよりは「じっくり味わい深く」弾いている。速いフレーズもゆったりとしたフレーズも、じっくり味わい深く弾き進めている。もともとテクニックに優れ、歌心を備えたギタリストである。そんなギタリストが腰を据えて「じっくり味わい深く」スタンダード曲を弾くのだ。良いに決まってる(笑)。

この盤の「キモ(肝)」は、バックのリズム隊。ウィリアムソンのピアノが効いている。タルのギターとの相性が良い様で、タルのバックに回って、タルのギターを引き立て、タルのギターの良き相棒の如く、心地良いユニゾン&ハーモニーを奏でている。そこに、西海岸の職人ベーシストのミッチェルが演奏の底を支え、西海岸の技のドラマー、レヴィーが演奏全体のリズム&ビートをリードする。この西海岸の精鋭リズム隊をバックに、タルは気持ちよさそうにギターを弾き進めている。

ジャケットもお洒落で良い。アレンジ良し、演奏良し、ジャケット良し。ジャズ・ギターの紹介本や紹介記事に、あまりそのタイトル名が上がることがほどんど無いアルバムだが、タルのギターで、グループ・サウンド重視でスタンダード曲を聴くのに最適なアルバムだと思う。タルのギターが少し引っ込むが、その分、グループ・サウンズ・トータルとして内容が充実したアルバムでしょう。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新。

  ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

« ピアノでジャズの歴史を駆け巡る | トップページ | ジャズ喫茶で流したい・260 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« ピアノでジャズの歴史を駆け巡る | トップページ | ジャズ喫茶で流したい・260 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー