北欧ジャズ・ピアノの風が吹く
ラーズ・ヤンソンは、1951年、スウェーデン生まれ。1975年にアリルド・アンドレセンのグループに加わり、プロとしての活動がスタート。自己のトリオを結成した1979年以後は、北欧ジャズの第一線で活躍している。北欧ジャズの担い手としては「古参」の存在。1980年代に、優れた内容のリーダー作を連発し、国際的に、北欧ジャズの担い手なる一流ジャズ・ピアニストとして認知された。
Lars Jansson Trio『Invisible Friends』(写真左)。1995年1月、オスロの「Rainbow Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Lars Jansson (p), Lars Danielsson (b), Anders Kjellberg (ds)。全曲オリジナルで固められた、北欧ジャズらしい、風が吹くように爽やかで、美しく親しみ易いメロディー満載のピアノ・トリオ盤。
面白いのは、何かと「キース・ジャレット」と比較されるヤンソンのピアノだが、この盤の前半では「ビル・エヴァンス」の影響が感じられるフレーズと響きが満載。しかし、ビル・エヴァンスのコピーでは無く、フレーズの弾き回しと「間」の取り方が似ているが、和音の重ね方はヤンソンのオリジナル。響きは深く透明度の高いエコーがかかった北欧ジャズらしい響き。北欧ジャズらしく、ヤンソンの解釈する「ビル・エヴァンス」といった風のピアノがユニーク。
後半は、いつも通りの北欧ジャズらしい、美しく親しみ易い「ヤンソン節」満載の、耽美的でリリカル、深遠でメロディアスなピアノの弾き回しが堪能できる。しっかり聴くと「キース・ジャレット」のヨーロピアン・カルテットのピアノとは、やっぱり違ってて、ヤンソンのピアノは、キースと比べて、表現がシンプルでトーンが暖かく、フレーズは判り易く親しみ易い。この盤の後半部分の音を聴いていても、ヤンソンのピアノは、キースのピアノとは「似て非なるもの」だと感じる。
バックのリズム隊もいかにも北欧ジャズらしい音で、演奏全体のリズム&ビートをしっかり支え、牽引している。ダニエルソンのベースは、しなやかな鋼の様なシャープな弦鳴りで、エモーショナルに堅実に、ベースラインを供給する。シェルベリドラムも柔軟なスティック捌きで、硬軟自在、緩急自在、フロントのフレーズに的確に反応するドラミングは相変わらず見事だ。
前作の初リーダー作であったトリオ盤から、4年を経てのリーダー作第2弾であるが、出てくる音世界にブレは無い。冒頭の「Invisible Friends」から、ラストの「Under The Bodhi Tree」まで、北欧ジャズのピアノ・トリオの音が満載。これだけ、耽美的でリリカルな音世界なのに、スピリチュアルな世界に入り込まず、美しく親しみ易いニュー・ジャズなトリオ演奏を展開するところが、ラーズ・ヤンソン・トリオの真骨頂。北欧ジャズの好盤の1枚です。
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