思い出しては聴く好トリオ盤
「小粋なジャズ」を探索していると、これは聴いたことないぞ、と思って聴いたら「当たり」という盤に出くわすことが良くある。もちろん、ジャズ雑誌の新盤紹介や、様々なジャズ本紹介本、そして、ネットでのジャズ盤レビューの記事を参考にしてはいるのだが、こういう「当たり盤」に出くわすと、何だか一日が明るくなるから不思議だ。
Joel Weiskopf『Devoted To You』(写真左)。2005年11月30日録音の録音。CRISS CROSSレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Joel Weiskopf (p), John Patitucci (b), Eric Harland (ds)。ポスト・バップ・スタイルのピアニスト、ジョエル・ワイスコフがリーダーのトリオ作品。中堅技巧派ベーシスト、ジョン・パティトゥッチと、これまた、中堅の堅実実直なドラマー、エリック・ハーランドがリズム隊を務める。
Joel Weiskopf(ジョエル・ワイスコフ)は、1962年、米国ニューヨーク州シラキュース生まれのアメリカのジャズ・ピアニスト。今年で61歳のベテランである。我が国ではその名前はマイナーな存在。ウディ・ハーマン・ビッグ・バンドや多くのサイドマンとして活躍してきたピアニストらしく、もともと「ピン」で活躍してきたタイプでは無いらしい。僕は10年ほど前に、ワイスコフの名前を知った。
ワイスコフのピアノは耽美的でリリカル、ファンクネスは希薄で、米国出身でありながら、欧州ジャズ的な響きが個性。弾き回しは流麗でモーダルなフレースが切れ味良く展開される。どこかで聴いたことがある雰囲気なんだが、バップな弾き回しとは無縁なので、エヴァンス派とは言い難い。ポスト・バップな弾き回しと時折出てくる「静的なスピリチュアル」風のフレーズが独特。あれ〜このピアノって聴いたことがありそうで無いなあ、と思って耳を傾けているうちに一気に聴き通してしまう。
バックのリズム隊は、手練の強者中堅ジャズマンの2人が担当している。パティトゥッチは重低音でしなりのあるブンブン・ベースを弾きまくり、ハーランドはフロントのワイスコフのピアノを鼓舞し押しまくる様に、変幻自在、硬軟自在に叩きまくっている。このトリオ演奏って、ベースとドラムのリズム隊が結構、積極的に前面に押し出ているのだが、不思議とワイスコフのピアノとのバランスが程良く取れている。ワイスコフのポスト・モダンなピアノが「芯が入っていて、音の根幹が太い」からだろう。
トリオのメンバーが3人三様、しっかりと平等に全面に押し出たインタープレイが意外と聴き応えがあって、良い感じです。ジャズの歴史の1ページにその名を残す様な名盤では無いんですが、不思議と時々、思い出しては繰り返し聴く、不思議な魅力を持った「スパンの長いヘビロテ盤」です。この「時々思い出しては繰り返し聴く」位のスパンが最適なピアノ・トリオ盤です。
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