時には「古き良きジャズの音」
ゴリゴリのモード・ジャズや静的スピリチュアルなニュー・ジャズなど、バリバリ硬派なメインストリーム志向の純ジャズ盤を聴き続けていると、演奏のテンションが基本的に高いが故、時々、息抜きをしたくなる。
息抜きをしたくなると、スイング時代からのジャズ演奏の雰囲気を継承した、ビ・バップでもなく、硬派でストイックなハードバップでもない、純粋に「古き良きジャズの音」をキープした中間派ジャズが聴きたくなる。
Pee Wee Russell & Buck Clayton『Swingville Volume 8/ Swingin'』(写真左)。1960年3月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Pee Wee Russell (cl), Buck Clayton (tp), Tommy Flanagan (p), Wendell Marshall (b), Osie Johnson (ds)。プレスティッジの傍系レーベル、Swingvilleからのリリース。
Swingvilleは「トラッド・ジャズ」のレーベル。ディキシーやスイングジャズの名手たち、エリントンやベイシーのバンドでスターだった人たちの演奏を聴くことが出来る、「古き良きジャズの音」をキープした盤をリリースしていたレーベルである。
リーダーの1人、Pee Wee Russell(ピー・ウィー・ラッセル)は、1906年生まれ、米国ミズーリ州出身の、ディキシーランド・ジャズからスイング・ジャズ、後に「中間派」ジャズの代表的クラリネット奏者。
さて、アルバムの内容に戻る。ピー・ウィー・ラッセルのクラリネットと、バック・クレイトンのトランペットがフロント2管のクインテット編成なんだが、メンバーは基本的に中間派ジャズのジャズマンが集結している。が、1人だけ、あの「名盤請負人」と名を馳せたトミー・フラガナンがピアノを担当している。
演奏の雰囲気は、一言で言うと「心地良く寛いだ雰囲気のモダン・スイング」。ラッセルのクラリネットの、流麗で小粋でこぶしの利いたフレーズがホンワカ心地良く、クレイトンの張りのあるブリリアントなトランペットが心地良く響く。典型的な「中間派」ジャズな演奏で、特にスイング・ジャズ風の音作りが実に「ジャズらしい」。
そして、この「中間派」ジャズの演奏の中で、フラナガンのピアノが「キラリ」と光るフレーズを連発する。このフラナガンのピアノの存在が、この「中間派」ジャズにモダンな響きを宿らせて、このオールド・スタイルな、ノスタルジックな「中間派」ジャズの演奏を、意外と新しいイメージで聴かせている。「名盤請負人」フラナガン、侮りが足し、である。
こういう、ジャズらしいジャズ盤、というのも時には良い。息抜きをしたくなった時、難しいことは考えずに「古き良きジャズの音」に身を委ねる。至福の時である。
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いつも拝読しています。
ところでバードランドなどの司会はピーウイーマーケットでラッセルではないですよ。
投稿: | 2023年3月 8日 (水曜日) 19時00分
初めてのコメントですが、昔からの愛読者です。折に触れてはこちらに戻って、楽しませていただいています。
わざわざ言わなくてもいいかなと思ったのですが、どうしてもこれだけはと思いまして。。。
中間派大好きです。ブレイキーも大好きです。ピー・ウィー・ラッセルも好きですが、バードランドの司会者は「ピー・ウィー・マーケット」です。10インチ盤の『バードランドの夜』のジャケ写にも写っている、背の小さな名物男です。もちろんクラリネット奏者ではありません。
ぶしつけにすみません。これからも記事を楽しみにしています。
投稿: kpjazz | 2023年3月 9日 (木曜日) 23時32分
すみませんでした。ピー・ウィー・ラッセルと、ピー・ウィー・マーケットを混同して、記事を書いてしまいました。ついつい「ピー・ウィー」繋がりで、記憶が混同してしまいました。申し訳ありません。
早速、修正させていただきました。これからも、バーチャル音楽喫茶『松和』を宜しくお願いします。
投稿: 松和のマスター | 2023年3月10日 (金曜日) 09時29分