耳に優しいマイナーなトリオ盤
チックとブラックストンの「サークル」のアルバムを全部聴き直していて、さすがに耳がちょっと疲れた。耳に優しいピアノ・トリオなんぞが聴きたいなあ、という気分になって、ちょっとネットを彷徨ってみた。そうしたら、実に渋いレトロなジャケットが目に入った。あれっ、このジャケ、見たことある、と思わず、久し振りに聴き始めた。
Graham Forbes『The Martini Set』(写真)。1960年の作品。ちなみにパーソネルは。Graham Forbes (p), Bill Halfacre (b), Buddy Jett (ds)。グラハム・フォーブスは、スイング・スタイルのピアニスト。1930年代から、ウッディー・ハーマンなどの有名バンドを渡り歩き、戦後、フランク・シナトラにも重用されたピアニスト。様々なビッグバンドや歌伴をこなしたオール・ラウンダーなピアニストである。しかし、このフォーブス、今では無名、知る人ぞ知るマイナーなピアニストである。
そんなオール・ラウンダーな力量を遺憾なく発揮した、実にお洒落で小粋なピアノ・トリオ演奏である。トリオ演奏の全体の雰囲気は「ラウンジ・ジャズ」。1960年の作品とは言いながら、ハードバップにも、ファンキー・ジャズにも、当然、モードにも全く無縁。フォーブスのピアノのスタイルは「スイングから中間派」。
しかし、全くラウンジ・ジャズな演奏だが、フォーブスのピアノはさすが実力派。ラウンジ・ジャズな演奏だが、決して、イージーリスニングな雰囲気にはならない。ピアノにしっかりと芯が通っていて、右手のフレーズの小洒落たドライブ感は見事。左手のブロック・コードは趣味良くリズミカル。いわゆる「職人肌な、聴かせるピアノ」である。聴き応えがある。
スイングからバラード、なんでも弾き回す。身を入れた聴く類のピアノでは無いが、聴き心地が良いので、リラックスして聴き流すには最適なピアノ。歴史を揺るがすようなプレイでもなければ、当時のジャズのトレンドとはかけ離れた「スイングから中間派」なピアノなんだが、さすが職人肌な器用で卒のないピアノなので、不思議と最後まで聴き通してしまう。
まあ、フォーブス唯一のリーダー作&トリオ盤でレコード自体は珍しい「コレクターズ・アイテム」。辛口の硬派なジャズ・ピアノ者の方々からすると、とるに足らない、時代遅れのラウンジ・ピアノかも知れない。でも、何故か心地良いピアノ・トリオなんですよね、これが。僕にとっては、シビアなジャズを聴き続けた後、ちょっとした耳休めに最適なジャズ盤の1枚なんですよね〜。
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