« チックの「フリーへの最接近」3 | トップページ | 1955年のミンガス・コンボ »

2023年1月 9日 (月曜日)

耳に優しいマイナーなトリオ盤

チックとブラックストンの「サークル」のアルバムを全部聴き直していて、さすがに耳がちょっと疲れた。耳に優しいピアノ・トリオなんぞが聴きたいなあ、という気分になって、ちょっとネットを彷徨ってみた。そうしたら、実に渋いレトロなジャケットが目に入った。あれっ、このジャケ、見たことある、と思わず、久し振りに聴き始めた。

Graham Forbes『The Martini Set』(写真)。1960年の作品。ちなみにパーソネルは。Graham Forbes (p), Bill Halfacre (b), Buddy Jett (ds)。グラハム・フォーブスは、スイング・スタイルのピアニスト。1930年代から、ウッディー・ハーマンなどの有名バンドを渡り歩き、戦後、フランク・シナトラにも重用されたピアニスト。様々なビッグバンドや歌伴をこなしたオール・ラウンダーなピアニストである。しかし、このフォーブス、今では無名、知る人ぞ知るマイナーなピアニストである。

そんなオール・ラウンダーな力量を遺憾なく発揮した、実にお洒落で小粋なピアノ・トリオ演奏である。トリオ演奏の全体の雰囲気は「ラウンジ・ジャズ」。1960年の作品とは言いながら、ハードバップにも、ファンキー・ジャズにも、当然、モードにも全く無縁。フォーブスのピアノのスタイルは「スイングから中間派」。
 

Graham-forbesthe-martini-set

 
しかし、全くラウンジ・ジャズな演奏だが、フォーブスのピアノはさすが実力派。ラウンジ・ジャズな演奏だが、決して、イージーリスニングな雰囲気にはならない。ピアノにしっかりと芯が通っていて、右手のフレーズの小洒落たドライブ感は見事。左手のブロック・コードは趣味良くリズミカル。いわゆる「職人肌な、聴かせるピアノ」である。聴き応えがある。

スイングからバラード、なんでも弾き回す。身を入れた聴く類のピアノでは無いが、聴き心地が良いので、リラックスして聴き流すには最適なピアノ。歴史を揺るがすようなプレイでもなければ、当時のジャズのトレンドとはかけ離れた「スイングから中間派」なピアノなんだが、さすが職人肌な器用で卒のないピアノなので、不思議と最後まで聴き通してしまう。

まあ、フォーブス唯一のリーダー作&トリオ盤でレコード自体は珍しい「コレクターズ・アイテム」。辛口の硬派なジャズ・ピアノ者の方々からすると、とるに足らない、時代遅れのラウンジ・ピアノかも知れない。でも、何故か心地良いピアノ・トリオなんですよね、これが。僕にとっては、シビアなジャズを聴き続けた後、ちょっとした耳休めに最適なジャズ盤の1枚なんですよね〜。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新。

   ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

« チックの「フリーへの最接近」3 | トップページ | 1955年のミンガス・コンボ »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« チックの「フリーへの最接近」3 | トップページ | 1955年のミンガス・コンボ »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー