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2023年1月23日 (月曜日)

ラージのブルーノート盤・第2弾

数々の有望新人を発掘してきた、ヴァイブのゲイリー・バートンが新たに発掘した天才ギタリスト。パット・メセニーの様な「ネイチャーな響き」もあり、ジョンスコに「くすんで捻れる」ところもあり、それでも、他にありそうでない、ワン・アンド・オンリーな個性が見事である。そのギタリストとは「Julian Lage(ジュリアン・ラージ)」。

官能的な「くすんだ音色」と「前のめりでアグレッシブなフレーズ」は、ジュリアン・ラージのギターの独特な個性。テクニックはもちろん卓越したものだが、その「超絶技巧」を売りにした様な、派手派手しい弾き回しは無い。逆に、ラージの超絶技巧な弾き回しはとてもクールで流麗。うっかりすれば、ラージのテクニックのレベルの高さに気がつかないくらいである。

あくまで、ネオ・ハードバップな、モーダルなフレーズを聴かせる中で、そこはかとなく「ハイ・テクニック」が見え隠れする程度の奥ゆかしいもの。この「奥ゆかさ」が実に好ましい。この「奥ゆかしい」クールで流麗な弾き回しが、実は凄みがあって、聴き応えがある。

Julian Lage『View With A Room』(写真左)。2022年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Julian Lage (g), Jorge Roeder (b), Dave King (ds) と前作同様のトリオ編成。そして、この盤では、このトリオに、米国ルーツ音楽に根ざした「捻れギター」のレジェンド、Bill Frisell (g) がゲスト参加している。ギターのメインは、当然、リーダーのラージ。"レジェンド" フリゼールは伴奏に徹している。
 

Julian-lageview-with-a-room

 
このラージとフリゼールのギター2本の絡みがこの盤の聴きどころ。ラージとフリゼールは音色が似通っているので、音が重なると訳が判らなくなるのだが、この二人はそんなリスクを容易く回避していく。フリゼールの伴奏フレーズはレイジと決してぶつからない。ラージの音の間を埋めて、ラージと重なる時は、印象的なハーモニーで重なる。そうすることで、ラージの個性である「くすんだ音色」を際立たせている。

ラージのもう1つの個性である「前のめりでアグレッシブなフレーズ」については、フリゼールが少しずらして応答し、ラージのフレーズを前面に押し出す。そして、ホルヘ・ローダーのベースとデイヴ・キングのドラムが、クイックに効果的に、緩急自在に硬軟自在に反応する。

このラージのリズム隊に対する「呼びかけ」に対するリズム隊の応答のリズム&ビートが、このラージの「前のめりでアグレッシブなフレーズ」に効果的に響いていて、盤全体に心地良いグルーヴを醸し出している。

ラージのフレージングはアイデア満載で、今までに聴いたことの無いフレーズがどんどん飛び出してきて、聴いていてとても面白い。この盤でも、前作同様、フリゼールと合わせて、ジャズをはじめ、ロック、ブルース、カントリーなど、米国ルーツ・ミュージックの音要素を引用されていて(これが僕には堪らない)、ラージ独特の音世界が展開されている。この盤で、ジュリアン・ラージは確実に、僕のお気に入りギタリストになった感じがする。次作がもう楽しみになっている。
 
 

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