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2023年1月24日 (火曜日)

ミナス・ミュージックは欧州的

ジャズライフ誌主催の「Disc Grand Prix 年間グランプリ」の2022年度版が掲載されている。もう1年経ったのか、と嘆きながら、記事の中のディスクをチェックする。主だったものは、既に当ブログで取りあげているが、中には「あれ、これは何」と言った「見落とし盤」も幾枚かある。そんな「見落とし盤」を落ち穂拾いしながら聴き進めるのも、意外と「乙なもの」である。

そんな「見落とし盤」をチェックしていると、Rafael Martini(ハファエル・マルチニ)」の名前が目に入った。マルチニって、確かブラジル出身のピアニスト/作編曲家だった記憶があるのだが、2022年度に新盤をリリースしているのは知らなかった。もしかしたら、ブラジル音楽(リオ・ミュージックや、ボサノヴァ&サンバ)をベースとしたコンテンポラリーなフュージョン・ジャズと思い込んで、スルーしたのかもしれない。

Rafael Martini『Martelo』(写真左)。2022年8月のリリース。ちなみにパーソネルは、Rafael Martini (p, synth), Joana Queiroz (cl, clarone), Luka Milanovic (vln), Felipe José (cello), Pedro Durães (electronics), Antonio Loureiro (ds)。アコースティック/エレクトリック混成のセクステット編成。ペドロ・ドゥランエスが、エレクトロニクスで参加しているのが目を引く。

ハファエル・マルチニはブラジル・ミナスジェライス州都ベロオリゾンチ出身のピアニスト/作編曲家。ミナスの新しい世代を代表するミュージシャンであり、現代ミナス音楽シーンの中心的な存在。
 

Rafael-martinimartelo

 
ブラジル出身の音楽と言えば「アフロ色の強い」リオ・ミュージックや、ボサノヴァ&サンバを想起するが、ミナス・ミュージックは「欧州的」。クラシックや教会音楽などの影響が感じられ、洗練されたイメージ。聴いて想起するのは「ミルトン・ナシメント」であり、僕は「エグベルト・ジスモンチ」もイメージする。

確かに、このマルチニの新盤を聴くと、リオやボサノヴァ&サンバの微塵も無い。アコースティックとエレクトロニカが共存する、欧州的なニュー・ジャズ&静的なスピリチュアル・ジャズのイメージ。初めて聴いた時は「ECM」かと思った(笑)。

硬質でリリカルで自由度の高いニュー・ジャズな音と混沌とした現代音楽風のフリーナ音とが行き来する、それでいて、その構成は綿密にアレンジされ、制御されている。「ECM」風ではありながら、「ECM」ほどに耽美的ではない。どちらかと言えば「アーバン」な響きが音の全体を支配している様に感じる。

アコースティックとエレクトロニカが共存する現代のニュー・ジャズな音世界。これが欧州発では無く、ブラジルの「ミナス新世代」から発信されているとは驚きである。ジャズのグローバル化をひしひしと感じる。どこか1970年代のプログレッシヴ・ロックを想起させる展開もあり、これ、僕は「プログレッシヴ・ジャズ」と呼びたいくらいに感じ入った。

ジャズの裾野は広い。グローバル化は意外と急速に進んでいる。もはや欧州(北欧と英独仏)と米国と我が国を押さえておけばジャズはOK、という時代では無くなって、東欧やイスラエル、ブラジルにもしっかり注意を払わなければならない時代になった、ということなんだろう。
 
 

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