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2022年12月24日 (土曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・19 〜 『Sketches of Spain』

僕は、マイルス・デイヴィスとギル・エヴァンスのコラボレーションが大のお気に入りだ。Columbiaレコード移籍後の(レコーディングは前だが)『'Round About Midnight』から『Miles Ahead』『Milestones』『Porgy and Bess』『Kind of Blue』『Sketches of Spain』まで、ギルが直接関与したものから、間接的なものまで、マイルスとギルのコラボの成果はどのアルバムを聴いても、今でも惚れ惚れする。

時期的には、1955年から1960年初頭、ジャズでいうと「ハードバップ全盛期」である。そんな「ハードバップ全盛期」に、マイルスはいち早く、ポスト・ハードバップを打ち出し、モード・ジャズへのチャレンジと確立に取り組んでいる。この辺が、魔王ルスの「先取性」であり「革新性」の優れたところなんだが、マイルスが「ジャズの帝王」と呼ばれる所以だろう。

『'Round About Midnight』で、いち早く、ハードバップの演奏フォーマットを確立させ、次作の『Miles Ahead』から、ギルとのコラボで、モード・ジャズに取組み始める。最初の明確な成果が『Milestones』、そして、そのモード・ジャズを確立し、奏法的にも「けりを付けた」のが『Sketches of Spain』だろう。

Miles Davis『Sketches of Spain』(写真左)。1959年11月、1960年3月の録音。ちなみにパーソネルは、と言いたいところだが、細かいメンバー紹介は割愛する。
 

Sketches_of_spain_1
 

なんせ、この盤の演奏は、Miles Davis (tp) が主役、Gil Evans (arr, cond) とのコラボで、バックに錚々たるメンバーのジャズ・オーケストラ。それもフレンチ・ホルン,バスクラ、オーボエ、チューバ、バズーン、加えて、ハープが入る、ギル・エヴァンスならではの楽器構成。

スペインの作曲家ロドリーゴの人気曲をギル独特のアレンジで再編した、アルバム冒頭を飾る「Concierto De Aranjuez(アランフェス協奏曲)」の人気でこの盤は評価されるが、それは違う。この盤は、マイルス=ギルのコラボがモード・ジャズに「けりを付けた」、モード・ジャズを確立させた、ジャズの歴史的にも意義のある名盤である。

このアルバムに収録された曲は、殆どがいわゆるスパニッシュ・モードによる演奏。マイルスのスパニッシュ・モードの的確な解釈とギルの個性的なアレンジと共に、スパニッシュ・モードをベースとした演奏によって、モード・ジャズを「ものにしている」。この盤での、淀みの無いマイルスのモーダルな演奏は素晴らしいの一言。

それまでのジャズは「猥雑、庶民的、アクロバット的」で「クラシックの様な芸術性には無縁」という定評を覆し、ジャズというフォーマット、ジャズという音楽ジャンルが、モード・ジャズの確立によって、アーティスティックな側面を全面に押し出し、芸術性の高い音楽的成果を残すことが出来る、それを証明できる最高の一枚である。
 
 

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