ジュリアナの傑作カルテット盤
ドラマーがリーダーのアルバムは、その意図が分かりやすいものが多い。ドラマーは「リズム・セクション」のリズム&ビート供給の要の楽器。演奏するジャズのスタイルや演奏のトレンドの全てに対応出来るのが「ドラム」。そんなドラマーがリーダーを務めるリーダー作は、リーダーのドラマーが演奏で表現したい「志向」がメインになることが多い。
Mark Guiliana『The Sound of Listening』(写真左)。2022年3月、NYのブルックリンでの録音。ちなみにパーソネルは、Mark Guiliana (ds; syn on 3, 5, 7; drum programming on 7; Perc on 10), Chris Morrissey (b), Shai Maestro (p; Mellotron on 1, 5, 7; Ampliceleste on 1, 5, 7; Fender Rhodes on 2), Jason Rigby (ts; b-cl on 1, 3, 5, 7; cl on 1, 5; fl on 5)。
現代最高峰のドラマー&作曲家のマーク・ジュリアナ(Mark Guiliana)のリーダー作。ジェイソン・リグビーのサックスがフロント1管のカルテット編成。メンバー全員がマルチ・インストルメンタル。この盤の多彩は表現力は、この「マルチ・インスト」の成せる技である。現代ジャズの最新の表現技術を投入した、現代の新しいジャズの響きで満たされた音世界。
リーダーでドラマーのジュリアナは、本職のドラム以外に、シンセやドラム・プログラミングもこなす。ピアノ担当のシャイ・マエストロは、ピアノ以外のメロトロンやローズを弾きこなす。サックス担当のジェイソン・リグビーは、テナー・サックス以外に、バスクラやクラリネットも吹きこなす。
静的で流麗なスピリチュアアルなニュー・ジャズ志向の音世界がこの盤を支配する。基本はアコースティックな演奏だが、効果的にエレクトロニクスの手法を取り込んで、表現の幅を大きく拡げている。
ユーロ・ビートの要素も感じるし、アンビエント・ミュージックの要素も感じる。ECMっぽいニュー・ジャズな雰囲気も良い。しかし、リズム&ビートはジャジー。演奏全体に適度なテンションが張り巡らされて、緩んだところは微塵も無い。現代の静的で印象的なスピリチュアル・ジャズの好例。
静的で印象的でスピリチュアルな音世界の中で、やはり「要」となるのは、ジュリアナのドラミング。そして、クリス・モリッシーのベースが、演奏の音の底をしっかりと支えている。シャイ・マエストロのキーボードは、旋律楽器、リズム楽器の両方で八面六臂の大活躍。そんな充実しまくったリズム・セクションをバックに、ジェイソン・リグビーのリード楽器が心地良く吹き上げられていく。
「ドラミングのエキサイティングなニュースタイルの最前線に立っている」と評されたドラマー。デヴィッド・ボウイのアルバム『ブラックスター(★)』への参加でも知られる新世代ドラマー。そんなジュリアナの、アコースティックとエレクトロニクスの要素が効果的に統合された、静的で印象的なスピリチュアル・ジャズ。聴き応え十分です。
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