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2022年12月12日 (月曜日)

ベツレヘム・レーベルの特色

ジャズの有名レーベルのひとつに「ベツレヘム・レーベル」がある。カタログを見渡すと、他の有名レーベル、ブルーノートやプレスティッジ、ヴァーヴ、インパルス、リヴァーサイドなどとはちょっと異なる、ユニークなラインナップが面白いレーベルである。

ベツレヘムは1953年、株のディーラーだったガス・ウィルディという人物とプロ・ドラマーだったジェームズ・クライドがNYにて設立した「ポップスのシングルを扱うレーベル」。しかし、設立の翌年、1954年には早々にジャズ専門レーベルへと衣替え。

このレーベルの一番の特色は、米国の東海岸と西海岸の両方にオフィスを構え、偏ること無く、双方のジャズマンのリーダー作をリリースしたこと。ハードバップ期の黒人中心の東海岸ジャズと、白人中心の西海岸ジャズを偏ること無くピックアップし、記録していった珍しいジャズ・レーベルといえます。カタログを見渡せばそれがハッキリ判る。

活動期間は1953~61年と短いのだが、ちょうど、ハードバップ初期から60年代のハードバップ多様化が始まった頃まで、ハードバップ期をほぼ網羅した活動期間なのも興味深い。今回、このベツレヘム・レーベルのアルバムを「Bethlehem 6000 series (12 inch LP)」のカタログから、カタログ番号順に聴き直していこう、と思い立った。

K+ J.J.『East Coast Jazz/7』(写真)。1955年1月26日、NYでの録音。ベツレヘムのBCP-6001番。ちなみにパーソネルは、J.J. Johnson, Kai Winding (tb), Dick Katz (p), Wendell Marshall (b), Al Harewood (ds)。2人の名ジャズ・トロンボーン奏者、カイ・ウィンディングとJ.J.ジョンソンとの最初期の双頭リーダー・アルバム。パーソネルを見渡すと、東海岸でも西海岸でも無い。東と西のハイブリット的なメンバーチョイスである。
 

East-coast-jazz_7

 
この双頭リーダーの2人、2人ともトロンボーン奏者であり、それぞれ黒人と白人である。当時のジャズ・シーンの中では、ベツレヘム・レーベルならではと言える、実にユニークな取り合わせ。

ボワンとしたトロンボーン独特な音色が作り出すユニゾン&ハーモニーが、実にほのぼのとした心地よさ。双方のアドリブの、かたやファンクネス濃厚で黒い雰囲気、かたやスマートでシュッとした小粋な雰囲気、正反対の個性も楽しい響き。

タイトルが「East Coast Jazz」なんだが、出てくる演奏は東と西のハイブリット的な音の志向。しっかりアレンジが施され、2本のトロンボーンのフロントに立てた「ユニークなフレーズとアドリブ」を前面に押し出す思慮深いプロデュース。この音の傾向は「ウエストコースト・ジャズ」。しかし、演奏される音色と雰囲気にはファンクネスが漂い、音はアーバンで黒い。この音の傾向は「イーストコースト・ジャズ」。

いみじくも「Bethlehem 6000 series (12 inch LP)」のカタログの最初の1枚目のこのK+ J.J.の双頭リーダー作が、ベツレヘム・レーベルの特色を具体的に音にしているなあ、と感じる。

ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌のアルバム紹介に、まず、そのタイトルが上がることを見たことが無い地味なアルバムだが、聴けば、そのユニークな内容に思わず、一気に聴き込んでしまう。この盤を聴くだけでも、ベツレヘム・レーベルは侮れない、と思わず構えてしまう(笑)。
 
 

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