ベツレヘム・レーベルの特色
ジャズの有名レーベルのひとつに「ベツレヘム・レーベル」がある。カタログを見渡すと、他の有名レーベル、ブルーノートやプレスティッジ、ヴァーヴ、インパルス、リヴァーサイドなどとはちょっと異なる、ユニークなラインナップが面白いレーベルである。
ベツレヘムは1953年、株のディーラーだったガス・ウィルディという人物とプロ・ドラマーだったジェームズ・クライドがNYにて設立した「ポップスのシングルを扱うレーベル」。しかし、設立の翌年、1954年には早々にジャズ専門レーベルへと衣替え。
このレーベルの一番の特色は、米国の東海岸と西海岸の両方にオフィスを構え、偏ること無く、双方のジャズマンのリーダー作をリリースしたこと。ハードバップ期の黒人中心の東海岸ジャズと、白人中心の西海岸ジャズを偏ること無くピックアップし、記録していった珍しいジャズ・レーベルといえます。カタログを見渡せばそれがハッキリ判る。
活動期間は1953~61年と短いのだが、ちょうど、ハードバップ初期から60年代のハードバップ多様化が始まった頃まで、ハードバップ期をほぼ網羅した活動期間なのも興味深い。今回、このベツレヘム・レーベルのアルバムを「Bethlehem 6000 series (12 inch LP)」のカタログから、カタログ番号順に聴き直していこう、と思い立った。
K+ J.J.『East Coast Jazz/7』(写真)。1955年1月26日、NYでの録音。ベツレヘムのBCP-6001番。ちなみにパーソネルは、J.J. Johnson, Kai Winding (tb), Dick Katz (p), Wendell Marshall (b), Al Harewood (ds)。2人の名ジャズ・トロンボーン奏者、カイ・ウィンディングとJ.J.ジョンソンとの最初期の双頭リーダー・アルバム。パーソネルを見渡すと、東海岸でも西海岸でも無い。東と西のハイブリット的なメンバーチョイスである。
この双頭リーダーの2人、2人ともトロンボーン奏者であり、それぞれ黒人と白人である。当時のジャズ・シーンの中では、ベツレヘム・レーベルならではと言える、実にユニークな取り合わせ。
ボワンとしたトロンボーン独特な音色が作り出すユニゾン&ハーモニーが、実にほのぼのとした心地よさ。双方のアドリブの、かたやファンクネス濃厚で黒い雰囲気、かたやスマートでシュッとした小粋な雰囲気、正反対の個性も楽しい響き。
タイトルが「East Coast Jazz」なんだが、出てくる演奏は東と西のハイブリット的な音の志向。しっかりアレンジが施され、2本のトロンボーンのフロントに立てた「ユニークなフレーズとアドリブ」を前面に押し出す思慮深いプロデュース。この音の傾向は「ウエストコースト・ジャズ」。しかし、演奏される音色と雰囲気にはファンクネスが漂い、音はアーバンで黒い。この音の傾向は「イーストコースト・ジャズ」。
いみじくも「Bethlehem 6000 series (12 inch LP)」のカタログの最初の1枚目のこのK+ J.J.の双頭リーダー作が、ベツレヘム・レーベルの特色を具体的に音にしているなあ、と感じる。
ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌のアルバム紹介に、まず、そのタイトルが上がることを見たことが無い地味なアルバムだが、聴けば、そのユニークな内容に思わず、一気に聴き込んでしまう。この盤を聴くだけでも、ベツレヘム・レーベルは侮れない、と思わず構えてしまう(笑)。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて
★ まだまだロックキッズ 【New】 2022.12.06 更新。
・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。
★ 松和の「青春のかけら達」
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から11年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« 「キング・オブ・カルテット」である | トップページ | ブルーベックとデスモンドの融合 »
コメント